だれもが行きたくなる学校づくり

団体名:だれもが行きたくなる学校づくり研究会
代表者:藤井 和郎 所在地:岡山県 
助成年度:2011年度 教育活動助成
  • 図1 プログラムの全体像
  • 小学生の学習支援をする中学生
  • ASSESSの結果 各項目5点満点。低群は、事前調査で平均点以下だった者。

研究の目的

すべての子どもに良質のコミュニケーションを大量に提供するプログラムを開発、実践するとともに、小・中学校間の連携を強化するための教職員対象の合同研修会を行うことにより、不登校を未然に防ぎ、「だれもが行きたくなる学校」を実現するための指導方法や支援体制の在り方を探る。

研究の経過

子どものコミュニケーション能力を高め、ソーシャル・ボンドを築くために、すべての子どもに良質のコミュニケーションを大量に提供する次のようなプログラムを導入した。

1プログラムの全体像
不登校になった子どもへの支援を「三次支援」とすると、ハイリスクの子どもが不登校にならないようにする支援は「二次支援」、すべての子どもが不登校にならないようにする支援は「一次支援」ととらえることができる。従前の総社市の二次・三次支援の継続、深化を図りつつ、一次支援を強化する「マルチレベル・アプローチ」を実施した(図1)。

2一次支援・二次支援に係るプログラム
(1)ピア・サポートとSEL
ピア・サポート・プログラムを、トレーニング、プランニング、サポート活動、スーパービジョン等で構成した。生徒は、トレーニングとして8〜10単位時間のSEL(社会性と情動の学習)授業を通して、自他の感情理解や共感スキル、コミュニケーションスキル、問題解決スキル等を学んだ上で、サポート活動に臨んだ。サポート活動としては、欠席がちな生徒への支援、小学校訪問による学習支援や水泳指導の補助、中学生が小学校6年生に中学校生活の様子を説明して不安を和らげる「中学生と語る会」等を行った。
(2)協同学習
学習の生産性を向上させるとともに、学習者のソーシャルスキルを向上させることをねらい、教員間で各教科、毎時間5分間以上の協同学習の実践を申し合わせて取り組んだ。グループ思考の前に個人思考の時間を確保すること、役割分担を工夫してグループ構成員全員が参加意識を抱けるようにすること、本年度は凝った発問でなくてもよいので毎時間の実施を心掛けること、思考の交流だけでなく感情や役割の交流によるコミュニケーションを促進することなどに留意した。
(3)品格教育
学校という社会で、子どもたちが人と人がかかわるルールを学び、仲間と磨き合うことにより、よい習慣を形成するとともに、規範意識を向上させることをねらった。「郷土を愛し、夢に向かって共に伸びる子ども」という総社市の目指す子ども像や保護者アンケートを基に、「あいさつ」「思いやり」「責任」「感謝」などと、月ごとにテーマを設定してポスターにより可視化した。テーマにちなんだ朝礼の講話、道徳の時間、学級活動における自己目標設定と振り返り等の取組を通して、強制ではなく自分の頭で考え、心で理解して実行できるようにした。

3二次支援・三次支援に係るプログラム
(1)小中連携と欠席管理による早期介入
合同研修会の座席配置や演習のグルーピングの工夫により、同一中学校区の小学校と中学校が顔を合わせる場面を設定し、小・中学校の担当者等が気軽に声を掛け合える関係づくりに配慮した。
また、職員室の出欠状況ボードを活用し、欠席3日になると必ず家庭訪問(訪問時間は原則5分程度)をするとともに、チーム支援を発動するという早期介入のシステムを整えた。学校の体制をつくって子どもの欠席に敏感になり、担任によって対応にばらつきが生じないようにした。
(2)スクールカウンセラーを活用したチーム支援
早期介入や継続的支援の必要なケースにおいて、担任任せではなく、スクールカウンセラーと連携を保った少人数の支援チーム(コア・チーム)を機能させるとともに、定期的に学校全体で情報を共有する場を確保するようにした。

研究の成果

平成23年5月と平成24年1月に、ASSESS(6領域学校適応感尺度)及び学校生活アンケートを実施した。全体として友人サポート及び非侵害的関係の数値の向上が著しく、低群については6領域(生活満足感、教師サポート、友人サポート、非侵害的関係、向社会的スキル、学習的適応)すべての数値の顕著な向上が見られた。
また、速報値によると、市内中学校4校の不登校生徒出現率は前年度比16.3%減少した。学年別の不登校児童生徒出現率は、市内小学校15校第6学年が前年度比84.0%、中学校4校第1学年が30.7%、第2学年が11.4%、第3学年が11.4%減少した。いわゆる中1ギャップの解消に向けて、一定の効果が現れたと考えられる。
マルチレベル・アプローチによる一次・二次・三次支援のプログラムは、児童生徒の学校適応感の底上げにつながり、不登校児童生徒出現率の減少に効果的であったと言える。

今後の課題

1校内推進体制の整備
研修の積み重ねによって、リーダーの教員は理解が深まり専門性も高まったという実感を抱いているが、そこで学んだ理念や実践方法等を学校全体に浸透させることが難しいという意見が強い。各校において、全教員が各プログラムに対応した部会等に所属し実施計画の立案・運営に当たるなどして、一人一人の教員の参画意識を高め、プログラムの実行度を上げる必要がある。

2小・中学校間連携の一層の強化
小学校の不登校については、比較的重篤なケースが目立っている。各中学校区単位の生徒指導連絡会を毎月開催し、生徒指導主事、教育相談係、不登校対策研修のリーダーのほか、小学校は前年度第6学年担任、中学校は第1学年担当者等が集まり、生徒指導や教育相談、虐待等に係る情報を交換して児童生徒理解に資するとともに、不登校対策の取組に関する連絡・調整を行うことも検討したい。

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