福武文化賞と福武文化奨励賞
「この2つの賞は、岡山県の文化の向上に著しく貢献し、又は期待される個人、団体に平成12年からお贈りしています。これらの賞が、文化・芸術の振興と地域の活性化に携わる多くの人々の目標となり、その活動を一層高めていただく契機となるよう願っております。
2018年度 受賞者
福武文化賞
10歳の頃から高校卒業まで、戦前、戦後の岡山写真界の礎を築いた写真家山﨑治雄に師事。高校在学中に岡山市教育委員会主催「岡山県連合美術展」シリアスフォト部門で会長賞、金賞、白賞、ドキュメントフォト賞を同時受賞する。大阪シナリオ学校卒業(1968)後は、映画製作や上映会、執筆活動をはじめる。
1974年から活動するLiveHouse『PEPPERLAND』は岡山に「ライブ文化」とロールモデルを定着させた。毎日のごとく音楽イベントが繰り広げられ、ステージに立った地元バントやツアー・アーティストの数は約10750バンド、人数にして約3万人をくだらない。2004年には、写真家、映像作家、建築、デザイン、美術展企画など多岐にわたる活動の全貌を紹介する展覧会「スペクタル能勢伊勢雄 1968-2004」が岡山・倉敷市連携文化事業として開催された。最高の講師陣を招聘して開催されるサマー・オープンカジッジ「山のシューレ」(那須)で2009年から毎年講師を務めている。2008年には、岡山を代表する写真家山﨑治雄の精神と技術を若い世代に伝承するため銀塩写真家集団「Phenomena」を設立し、その指導にあたり、現在では美術館での発表を行えるまでに成長している。
活躍のフィールドは、写真・音楽・映画・美術など多岐にわたり、文化芸術領域を横断し、岡山・全国・海外を架橋している。つねに時代の変化や社会の課題にビビッドに感応し、自らの表現や活動を専門深耕してきた姿勢は、高く評価される。
福武文化奨励賞
倉敷美観地区を特徴づけている近代建築群の建築的評価、建築に至る歴史的経緯等に関する研究を30年以上にわたり行い、倉敷の特色ある建物・まちづくりについて解明し、建築文化を広く伝えてきた。特筆すべきは、大原孫三郎から絶大なる信頼を受けた郷土の建築家 薬師寺主計の知られざる建築経緯とその建築的価値を明らかにしたことである。
近代建築の保存活用の業績としては、「旧日銀岡山支店を活かす会」のメンバーとして、建築的な立場から参画し、ルネスホールとして蘇った一助を担う。歴史的な建物・町並みの保存活動では、10年間、備中足守地区に関わっている。
現在は、日本建築学会岡山支所長を務めるとともに、近代建築研究会代表として戦後昭和期において岡山県内に建築され残存している近現代建築を調査し、建物の評価を行い広く県民に伝える活動を始めている。
調査研究のみならず継続的な普及活動は、本県の建築文化の振興に寄与するとともに、地域の活性化が大いに期待される。
演奏活動は、日本各地とヨーロッパを中心に音楽祭やリサイタルに出演。これまでに東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京シティフィル管弦楽団、藝大フィルハーモニア、岡山フィルハーモニック管弦楽団、プラウエン-ツヴィッカウフィルハーモニーオーケストラ(ドイツ)などと共演し、「彩り豊かで歌うような音色」「メッセージ性の高い音楽家」として高い評価を得ている。
後進の指導としては、小学校のアウトリーチ活動への参加、ピアノコンクール・フェスティバルでの指導者向けの演奏・解説、母校での演奏会を行うなど音楽普及活動も活発に展開している。
岡山が誇るピアニストとして将来を嘱望され、今後とも本県の音楽文化の向上に著しい貢献が期待される。
2003年「TVチャンピオン」(テレビ東京1992-2006放送)で優勝しバルーンアートを本格的に始動する。国内外のバルーンアートの大会で数々の栄冠を獲得し、2010年にはアメリカで行われた世界大会(World Balloon Convention)の最高賞「マスターデザイナー」を日本人初で受賞。世界から注目を集めるバルーンアーティストへと躍進する。2018年には、同大会での2度目となるマスターデザイナー受賞。技術や表現力の高さで審査委員の支持を集めた。
2009年には会社を立ち上げ、国内外のコンベンションで講師やイベント会場の飾り付、ワークショップなどを務め、バルーンアートの普及啓発活動にも力を入れている。地元真庭市の国指定重要文化財旧遷喬尋常小学校の講堂で開催されたで音楽イベントとのコラボレーションや着ぐるみバルーンを創作するなど、更なる可能性を追求している。
バルーンアートを通した地域の活性化に大きな貢献をしており、今後も一層の発展が期待できる。
平成29年度 受賞者
福武文化賞
小学校に上がる前、津山から岡山へ引っ越して、使われている言葉の違いに気づいて以来、方言に興味を持ち続け、独自に岡山弁を研究。『岡山弁会話入門講座』をはじめとする岡山弁についての本の出版、カード1枚1枚に岡山弁のイントネーションと意味を記した岡山弁トランプの作成、「でーれーガールズ」など岡山が舞台の映画の方言指導や「ことばの祭り・たけべ」の実行委員、平成28年からは岡山弁協会会長に就任。公民館や各種団体などでの講演「岡山弁再発見!」はユーモラスな語り口に加え、古代吉備国の繁栄を伝える古墳の話を盛り込み好評を博している。
岡山弁に対する知識、情熱、また多彩でユニークな活動は、多くの人々に岡山弁を通した地域の魅力再発見の機会となっており、言葉文化の重要性を再確認するとともに、地域学への貢献度も高い。地域へのアイデンティティとしての方言にこだわった独自の活動は、長きにわたり岡山県の文化芸術の振興に大きく寄与し、顕彰するに値する。
蒜山西茅部地区にある集落郷原の名を冠にする郷原漆器の歴史は、約600年前までさかのぼるといわれているが、時代とともに衰退し、終戦を境に途絶えた。平成元年、岡山県郷土文化財団が本格的に郷原漆器復興の取り組みを始めた。氏は、平成15年から木地師として、郷原漆器の館にて、郷原漆器(岡山県無形民俗文化財)の製作・普及に従事、平成18年には郷原漆器の館の館長に就任した。平成17年には日本伝統工芸中国支部展で岡山県知事賞の受賞を皮切りに、数々の賞を受賞。今年は日本工芸会中国支部60周年記念展において金重陶陽賞を受賞し、作家としても充実してきている。
一方で、伝統工芸の技を子どもたちが体験することで、ものづくりの喜びを感じてほしいとの思いから、真庭市内の小学校で本物の漆塗り体験授業を行ったり、博物館や美術館でのワークショップを積極的に取り組んでいる。また、ロンドンで開催された真庭フェアに出展するなど、普及にも精力的に活動を行っている。
厳しい環境の中で向上心もあり情熱をもって伝統を継いでいこうとする若い力は、伝統工芸に新しい価値を創造すると評価された。
福武文化奨励賞
武蔵野美術大学卒業後、板橋区立美術館学芸員として数多くのワークショップや「二十世紀末美術展」「都市に棲む・ネコのひたいに建った家」などを企画。その後独立をして有限会社イデアを設立。学校、集合住宅、ミュージアムにおける、コミュニケーションを誘発する新しい学びの場のデザインに取り組む。平成25年、倉敷市玉島の実家を改装して、日本で初めてのクリエイティブリユース(庭や企業から日常的に生み出される廃材をそのまま破棄せず、人のクリエイティビティー(創造性)を使って、これまでに見たこともないような素敵なモノに生まれ変わらせる取り組み)の拠点「IDEA R LAB」を開設し、全国から注目を浴びている。「IDEA R LAB」を中心としたコミュニティづくりは、これからの時代の地域づくりのあり方にも一石を投じることを予感させる。
時代が求めるクリエーター、プランナーとしての功績は高く、先駆的な取り組みは、岡山の文化芸術に大きな刺激を与えている。また、おかやま文化芸術アソシエイツのコーディネーターに就任し、東京オリンピックに向けて、岡山県の文化芸術をけん引してくれる期待度も高い。
岡山県立瀬戸高等学校を卒業後、画家としての活動を経て平成16年にアニメーションに転向。電子ペンでコンピューターに手書した原稿1万枚以上を使った独学の手法で、平成18年、第1作「ぼくのまち」(17分)がイメージフォーラム・コンペティション部門奨励賞に選ばれ、英国の映画評論家の目に留まったのをきっかけに活動の場を国内外に拡げる。第2作「蟻」(11分)は、カナダ、フランス、スペイン、ブラジルなどの映画祭やアートイベントで上映されるなど世界的に評価される。第3作「天使モドキ」(13分)は、世界有数の歴史と規模を誇るフィンランド・タンペレ国際映画祭のインターナショナルコンペティション部門に入選し、グランプリ受賞候補にノミネートされた。
一方県内では、アートプロジェクトおかやま、アーティスト・イン・レジデンスに参加。また赤磐市出身の永瀬清子の魅力を映像と音楽で表現する「きよこのくら」の製作に参加、郷土文化の保存、伝承にも意欲的に取り組んでいる。
地域に存在する資源や社会活動を活かしながら新たな文化的価値を地域に付加し、創造する活動は、岡山県の文化芸術による地域づくりに大きく寄与している。
昭和47年年岡山ガスに入社。会社勤めの傍ら昭和56年、映像文化交流会を設立。「映画を見ることは人生を豊かにすることであり、同時にさまざまな国の文化にふれることでその国の理解を深めることができる」という思いのもと、岡山では見ることが難しい芸術性の高い映画「フォルカー・シュレンドルフ監督特集」をはじめ、「ヴェルナー・ヘルツォーク監督特集」、「汚れた血」などを美術館の映像ホールを借りて自主上映した。
「映画環境を向上させたい。さまざまなジャンルの映画、心を動かす映画がたくさんあることを紹介したい」と大手映画会社の直接の影響下にないミニシアターのシネマ・クレール石関を平成6年に開館。さらに、会社をやめて2館目のシネマ・クレール丸の内を平成13年開館し、上映を続けている。
シネマコンプレックス(複合映画館)の台頭で既存の映画館が次々に閉館し、シネマ・クレール石関も閉館するなど経営の環境は厳しい。多くの観客動員は見込めないが、良質な国内外の映画を提供し続けてきたシネマ・クレールが、岡山の映像文化に果たしてきた役割は大きい。
民間企業勤務時代、企業のメセナ事業を通して各地の芸術・文化・アート・地域貢献との関わりを深める。平成2年に始まった慶応義塾大学のアートマネジメント・プロデュースのオムニバス講座に参加、アートプロデューサー・アートディレクターとしての活動を開始。平成13年、地元総社市阿曽の鋳物の復興をアートとのコラボレーションによって実現できないかと考え鬼ノ城塾を発足。平成20年には自ら鋳物の修行を始める。
鬼ノ城塾は、会田誠、山口晃など日本を代表する美術家や西沢立衛をはじめ世界で活躍する建築家、南條史生や秋元雄史といった美術館長など多彩な講師を招聘し講座を実施。毎回多くの参加者を集め、アーティストやアートに興味がある人たちの交流の場となっている。平成28年には、講師の一人、世界的に知られる美術家榎忠氏と古代の鉄とのアートコラボ「鬼・鐵・忠」を実現して注目された。平成29年8月に通算100回目を迎え、聴講者は延べ5000人を超えている。
古くから鉄の集落とされてきた総社市阿曽地区において、地域に残る古代吉備の鉄文化を現代アートの力で再興・伝承していく取り組みはユニークで、岡山県の文化芸術による地域づくりに果たした役割は大きい。
平成28年度 受賞者
福武文化賞
切手をモチーフとした現代美術作家として国際的に知られる。平成6年岡山県津山市に生活・制作拠点を移し住民参加型の展覧会開催や「美作三湯芸術温度」などのアートプロジェクトにも積極的に参加し、若手作家をけん引する作家としての役割を担うと共に、岡山の文化芸術の振興に貢献している。
さらに津山市を中心とした県北エリアで活動するダウン症児親の会では、子どもと一緒にグッズを制作し、手指の訓練と経済的自立を試みたり、津山市の特産「横野和紙」の商品開発や需要の拡大に取り組むなど、文化芸術による地域づくりへの貢献度は高い。自身の制作にとどまらない氏の活動は、岡山県の文化芸術の振興に大きく寄与し、顕彰するに値する。
福武文化奨励賞
倉敷芸術科学大学で彫刻を学び、大学院1年時に日展に初入選、2008年には岡山県展彫刻部門で山陽新聞社大賞を受賞、同年日展では「豊かな感性と彫刻表現の今を感じさせる」と特選に輝いた。以後、異素材を組み合わせる独自の人体表現を追求し、国内外のグループ展、個展で成果を披露し続けている。
作品制作の一方でアートと社会の関係という問題を常に考えている。閉館していた旧萩野美術館を現代アートで新たに再生させようとする試みや地域や市教委などと協力して進めている小学校の空き教室をギャラリーにする試みなどの取り組みはその表れであるといえよう。
異色の作品制作とともに地域活性化に大きく寄与する取り組みから目が離せない。
奈義町現代美術館準備室から企画・運営に関わり、県北を代表するアート拠点に育てた功績は大きい。美術館の活動は常設展のみならず企画展覧会や地域住民参加型のワークショップなど多岐にわたるが、小さいながらも一貫性を持った内容で地道な活動を継続している。美術館の新たな魅力と可能性を求めていくための試みも逐次開催し、なかでも、地域文化に刺激を与え新陳代謝を促そうと、県内外の新しい才能の発掘を目的に若手作家を起用する姿勢は特に高い評価を得ている。
併せて、県展の審査委員、美作三湯芸術温度キュレーターなども積極的に務め、地域活性化の推進リーダーとして更なる今後の活躍が大いに期待される。
幼少期からクラシックバレエを学ぶが、大学で上京し、珍しいきのこ舞踊団への出演をきっかけにコンテンポラリーダンスに転向。その後、東京を拠点に、ニブロール作品等様々な客演やソロ活動を経て、フランス政府給費留学生となり、同国ではソロパフォーマンス活動や他ジャンルのアーティストとのコラボレーションなどを通して日々研鑽を積む。現在も世界的なパフォーマンス・グループ「ダムタイプ」のメンバーとしてクリエイションから参加し、ダンサーとしても第一線で活躍する。
一方で、岡山県の実施する事業、岡山国民文化祭2010等にも積極的に参加し、地域文化への文化芸術の展開、普及のために熱意と郷土愛をもって精力的に活動している
『まちに灯をともす』を合言葉に平成18年設立以来、倉敷美観地区とその周辺地域の歴史的建造物の調査を行うとともに、空き家を町家暮らしが体験できる滞在型宿泊施設に改装するなど、伝統的な町家再生や利活用を行うことにより地域の生活文化の継承や景観保全を図るための意欲的な活動を継続している。
「全国町並みゼミ倉敷大会」では、当団体が中心的役割を果たし大会を成功に導くとともに、翌年には、備中地域の町家を舞台とした体験型イベント「備中の町家でクラス」を企画するなど、まちづくりを担う人材育成や、歴史的な景観保全への機運醸成にも多大な貢献を果たしている。
平成27年度 受賞者
福武文化賞
「カフーを待ちわびて」で鮮烈なデビューを飾って以来、勢力的に執筆活動を展開。大原美術館が登場する「楽園のカンヴァス」では第25回山本周五郎賞、直木賞候補になる。「ジヴェルニーの食卓」も直木賞候補になるなど、小説としての完成度はもちろん、小説を通してアートと一般の読者をつなぐ役割を果たした意義は大きい。
小学6年から高校までの多感な時期を岡山で過ごしたことから、岡山が作品に登場することも多く、方言がそのままタイトルになった「でーれーガールズ」は映画化され、オール岡山ロケ、岡山弁、岡山の俳優の起用など岡山へのこだわりを持った地域密着型の映画となり話題となった。文学とアートを両輪にしたユニークな活動、業績、発信力が高く評価された。
福武文化奨励賞
金沢美術工芸大学で油彩画を学び、その後ナンシー国立高等美術学校(フランス)の大学院美術専攻修了。学芸員や美術講師などを経て、現在は真庭市立中学校で美術の非常勤講師を務める。
平成26年には「第17回岡本太郎現代芸術大賞 特別賞」や「第15回岡山芸術文化賞 グランプリ」を受賞し、県内外で気鋭の現代アート作家としての活躍が目覚ましい。
一方で地元の旧岡野屋旅館を拠点に展開する岡野屋プロジェクトを企画運営するなどプロデュースにも力を入れている。単なる一個人のアーティストとしてではなく、地域社会と暮らしに根ざした制作、プロジェクトを行い、地域を活性化するキーパーソンとしても期待される。
岡山城東高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻ならびに東京藝術大学大学院修士課程を首席で卒業。国際コンクールの入賞歴も多数あり、しなやかで香しく、瑞々しい音楽性は評論家や音楽家の評価も高く、世界へ飛び立つ期待の新鋭として最も注目されている。現在は10月に開催される世界最難関の[ショパン国際コンクール](5年に一度開催)に挑むためポーランドで更に研鑽を積んでいる。
一方で岡山フィルハーモニック管弦楽団の他多数オーケストラと共演するコンサートや岡山をはじめ全国でリサイタルを開催しクラシックの普及にも積極的に取り組んでいる。岡山が誇るピアニストとして将来を嘱望されている。
紺と白を基調とした幾何学模様や縁起物を織り込んだ絵絣である岡山県郷土伝統工芸品の作州絣は、美作地域の庶民に親しまれていながらも平成13年途絶えかけていた。作州絣の復興に向け、染めと機織り技術を一から学び、平成24年には「手織作州絣」の継続製造者として岡山県から認定を受ける。また「作州絣を育てる会」を「作州絣保存会」に改め、伝統工芸伝承の普及と後継者育成に心を砕き多方面で活動を続けている姿勢が高く評価された。
織り人養成講座や地元の小中高等学校での伝承継承授業をはじめ、平成26年には機織りの実演見学や糸紡紡ぎ体験などができる「作州絣工芸館」(津山市西今町)をオープンさせ、作品の販売も行い観光産業としても成り立つよう取り組んでいる。
江戸時代から途絶えることなく続く「地歌舞伎」の姿を現在に伝えるものとして昭和41年に設立。「地歌舞伎」は村の年中行事・社交場として大切にされてきたが戦後、農村からの若者の人口流出、新たな娯楽の誕生などにより急速に姿を消していった。そのような中、奈義町では歌舞伎専門職員を採用するなど存続に向けて町を挙げた保存伝承の取り組みを行い、今日まで継承されている。
年間4回の定期公演に加え、県内外への出張公演など積極的な活動を展開する傍ら、「こども歌舞伎教室」や地元小学校3年生の総合学習時間に1年を通して行う歌舞伎体験指導を行うなど後継者育成にも努めている。長きにわたる活動は県内伝統芸能の範となっており、地域文化の向上に果たした功績が高く評価された。
平成26年度 受賞者
福武文化賞
陶土に様々な土が入り混じった「混淆土(こんこうつち)」を用い、形の追求に極限まで挑み、革新的な造形を導き出し、現代備前焼に新しい地平を切り開いている。海外での個展を開催、出品するなど世界的に活躍する一方で、岡山県美術展覧会の審査委員や日本工芸会中国支部の副幹事長を務め、岡山県の陶芸、工芸の振興、発展にも尽くしている。岡山県が誇る伝統的な焼き物である備前焼作家として、永年にわたり国内外で活躍し、後に続く若手備前焼作家に与えた影響は大きく、現代備前焼をリードする陶芸家として、全国的に高い評価を得ている。
福武文化奨励賞
伝統的な備前焼に自らの感性に加えて、大学で学んだ彫刻教育で培われた秀逸な造形力が十二分に発揮され高く評価されている。作域は、茶事に用いられる茶盌から古代の有機生命体を思わせるオブジェまで幅広く、受け継がれてきた技術にモダンさを加えた、新たな備前の世界が広がっている。伝統を受け入れつつ、新しい何を加えることができるのか、深く問い続ける真摯な姿勢は、現代備前焼の将来を切り開く旗手として今後ますますの活躍が期待される。
大学卒業後は日本画家として東京の画廊や美術館、百貨店での個展やグループ展を中心に活躍する一方、草創期のコンピューター・グラフィックスの世界でも評価を受けている。平成8年から吉備中央町へと拠点を移し、岡山地方版年賀状原画制作や美術館での講演、ワークショップ等多数実施。近年は岡山県天神山文化プラザで企画・運営に携わるなど岡山県の文化芸術全体の発展・普及にも努めている。日本画家であると同時に描法や画材、描画道具の研究を進めてきた研究者でもある。特に全国的に注目された尾形光琳作「紅白梅図屏風」の再現が高い評価を得た。
母親である望月太津友(鼓奏者)の出身地・矢掛町で幼少の頃より日本舞踊の稽古に励み、日本舞踊の五大流派の一つ花柳流全門弟代表の人間国宝・花柳寿南海に師事し、現在最も飛躍が期待されている若手日本舞踊家の一人である。日本舞踊界で高い評価を得るとともに、若手日本舞踊家で構成する「藝○座」(げいまるざ)の同人となり、古典のみならず時代性を盛り込んだ創作舞踊にも挑戦し、自己研鑽に努めている。国立劇場や海外での公演、オーケストラとの共演など活動の幅を広げる一方で、故郷の岡山にも稽古場を置き、矢掛の夏まつり、岡山後楽園でのレクチャーなど郷土の芸術文化の普及にも寄与している。
昭和59年、音楽を通じて人間形成を図り、挑戦し続け成遂げる強い心、他人を慈しむ心を養うことを目指して倉敷市を拠点に設立。定期演奏会、福祉施設や病院でのボランティアコンサートのほか県内公演・海外公演を含む多彩な活動を積極的に行ってきた。県内のジュニア団体のパイオニアとして、オーケストラ活動の普及促進にも取り組み、世界で活躍する多くの音楽家を輩出している。30年にわたる活動は、地元音楽文化の一翼を担うまでに成長し、今後も更なる意欲的、継続的な活動が期待される。
平成25年度 受賞者
福武文化賞
「バッテリー」をはじめ夢を与える作品や青少年の心の揺れを掘り下げた数々の作品を世に送り出している児童文学作家・小説家。美作建国1300年記念事業など地域振興にも積極的に関わる氏の全国に発信する影響力は大きく、岡山県の文化振興に寄与した功績は誠に顕著で、各方面から賞讃されている。
縞を主題とし、吉備野にある自然素材で染めた糸で紡ぐ染織家。短歌にも造詣が深く、作品に添えられた短歌は、作品に織り込まれより豊かな表現力となっている。岡山県の染色界のパイオニアとして、40数年にわたりひとつの道をひたすら追求する姿勢は高い評価を得、今もなおも精力的に作品に取り組み、最近の進展がますます注目されている。
福武文化奨励賞
アートによる地域振興に貢献している写真家。平成16年から、ライフワークとして訪れていた犬島で、企画・主宰している地域とのかかわりを大切にした「犬島時間」の取り組みは、10回目を迎え、全国から注目されているアートイベントとなり、その手腕が高く評価されている。
西粟倉村で家具にはあまり適さないヒノキに着目し、ヒノキで家具を作るという新しい文化に挑戦している家具職人。50年100年先の暮らしとモノが生まれる場所を考え、森林資源の有効利用や人と森との関わりを見つめ直し、定住し創造する姿勢が高く評価されている。
丸みを帯びた太くて重い声は、声量と艶があり、表現力も豊かでヨーロッパ各地で高い評価を受けているオペラ歌手。地元岡山では、音楽のすそ野を広げようと寺院や美術館ホール、ミニオペラなどの企画に積極的に取り組み、留学の成果を活かした活躍が今後更に期待されている。
ソロ活動、室内楽、オーケストラとの共演など充実した活動を展開する一方で、自らが主宰する弦楽四重奏団「ベルリン・トウキョウ」を結成、ヨーロッパでは高い評価を得ているヴァイオリニスト。地元倉敷での定期コンサートなど岡山での演奏活動にも積極的に取り組み、今後更なる活躍が期待されている。
平成24年度 受賞者
福武文化賞
社会性・実験性の高さと豊かな表現力を兼ね備えた舞台作品を作り続け、日本を代表する戯曲家・演出家として世界で活躍しながら、同時に岡山県の文化芸術の発展向上、普及及び担い手の育成のために尽力され、その創造性と行動力は誠に賞讃されている。
岡山県と中央詩壇との交流の活発化をはじめ、後継者育成やジャンルを超えた各種文化企画・事業への参画を積極的に行い、文化関係者のみならず教育関係者からも高い評価と大きな信頼を得、長きにわたり岡山県の文化向上に貢献されている。
福武文化奨励賞
「描蒟醤(かききんま)」という技法に、日本でただ一人取り組む漆芸家。岡山県が世界に誇る備中漆の復興・普及、後継者の育成にも積極的に取り組み、地域文化への貢献は顕著で、衰退が懸念されている伝統工芸において、今後更なる活躍が期待されている。
5年間のヨーロッパ留学後、地元岡山県に戻り演奏活動を精力的に展開。その場の空気を受け止め、自身が持つ表現の中から最良の表現を選び取る・・・その場でしか味わえないサイトスペシフィックな演奏空間の創出に優れた才能を発揮されている。
地域に根ざした旺盛な出版活動と地域を掘り起こす本づくりは、全国的にも希少な存在として注目を集め、執筆者と向き合う真摯な編集姿勢は高く評価されている。出版・編集という分野での地域振興はユニークでかつ多様性があり、今後更なる活躍が期待されている。
真庭から発信する「その土地と人の営みを見つめる゛地産地生゛映画」は国内外から高く評価され、地域振興に映画という手法を用いたことは新しい試みであり、制作や上映を通して文化的なネットワークを構築した活動もユニークであると評価されている。
平成23年度 受賞者
福武文化賞
若手美術家育成のための「I氏賞」の創設や、故郷高梁市の子供たちの育成支援など、社会における芸術文化の重要性、人にとってのふるさとや地域文化の大切さ、青少年に対する熱い想いをかたちにして実践し続け、岡山県の文化芸術の発展に大きな功績をあげている。
不自由な道具や設備を自らの手で改良しながら積み上げた「自分流」の手法により、身近に置いて使える美しい「倉敷ガラス」を生涯をかけて創り育てた。「倉敷ガラス」は、今や日本を代表する民藝の美として評価され、地域の活性化にも大きく貢献している。
福武文化奨励賞
「巨木」「古木」を主なモチーフとした力強い筆跡は、木の生命感を圧倒的な重厚さと存在感で示し、見る人の想像力をかきたて記憶の中に生き続ける作品となっており、今後ますます純度を増し昇華していくことが期待されている。
三味線で江戸から昭和の庶民のはやり唄を唄う俗曲師として、日本の「粋と艶」が生きた芸をはじめ、ジャズを融合させた自由で楽しい音楽にも取り組んでいる。活動は世界各地に及び、艶やかさと芸への情熱のある和のエンターティナーとして注目されている。
白石踊を伝承するために島民全員が会員となり、地元の小学校や中学校と連携し指導を行うほか、出前講座の実施等、伝統行事の維持にとどまらず記録、調査研究にも努めるなど伝承と普及に取り組み、地域社会の中心的な担い手にもなっている。
ルネスホールを保存・管理運営する一方、会員の多彩な能力や人脈を生かして多方面にわたる自主事業の展開を図りつつ、地域社会の新たなライフスタイルを生み出そうとしており、岡山県の芸術文化の創造・発信に欠かせない存在となっている。
平成22年度 受賞者
福武文化賞
6歳でクラッシックバレエを始めてから長きにわたり国内外で活動し、国際的な公演への出演・振付・演出等により芸術交流に寄与している。また、岡山県のバレエ界の中核として、舞踏教育の向上と担い手となる人材育成に果たした功績は大きく、その地道な活動はバレエ界のみならず県内の幅広い文化関係者から大きな信頼を得ている。
日本有数のグラフィックデザイナーとして著名で、既に国際的に活躍していますが、近年は故郷岡山のために尽力したいという強い意欲から、昨年は岡山県美術展覧会で新設されたデザイン部門の審査員として、また今年は瀬戸内国際芸術祭2010のポスター等のコミュニケーションデザインや、国民文化祭のポスター類を手掛けるなど地域への貢献を積極的に行っており、岡山県のデザイン界に大きな刺激を与えた功績は高い評価を得ている。
福武文化奨励賞
東京芸術大学美術学部在学中から実力派として知られ、院展等での数々の受賞歴に加え、昨年は日本美術院賞を受賞し将来が大いに期待されている。近年は、日本画の伝統を踏まえながらも、新しい日本画の可能性を探るために意欲的な作品に取り組んでいる。また、岡山県に居住し教職者として後進の指導に当たるとともに、平素から日本画に接することができる環境づくりと層の拡大、レベルの向上に取り組む姿勢は、今後の美術界の発展につながるものと大いに期待されている。
受賞歴と活動歴が示すとおり、その演奏は国内外で非常に高い評価を得ている。素晴らしい集中力と曲を読む力、多彩な音色、奥深い豊かなサウンド、フレキシブルでしなやかな感情表現が氏の特徴とされている。活動の範囲も、オーストリアを拠点に、ヨーロッパ・アメリカ・アジアへと広がっている一方で、年に1~2回は岡山で演奏会を開催したり、また後進の指導も積極的に行っている。今後岡山が誇る演奏家へと成長することが大いに期待されている。
平成17年に津山市へ帰郷して以来、活動拠点を地元・津山とし、自然と人間の関係をテーマに制作を続けている。氏の作品は、「森」や「惑星」にみられるように対象のありのままの姿をモチーフにしたものが多く、その本質を真正面から凝視し本質のみをとらえようとする独自な表現が評価されている。また、世界に向けて活動の幅を広げていく姿勢は、地方で活躍している同世代作家への大きな刺激と励ましのメッセージともなっており、今後一層の活躍が期待されている。(財団と人 #1)
16歳で東京国際和太鼓コンテストの大太鼓部門で最優秀賞を最年少で受賞するなど、実力は早くから全国で認められている。和太鼓を始めて技と心を磨いた15年間の成果は、倉敷天領太鼓を率いる存在に成長した。2本のバチで自由自在に表現する躍動感あふれるリズム、上半身を大きく反らせる独特の打法が氏の特徴とされており、活動は国内にとどまらずフランスやオーストラリアなど海外にも広げている。現在22歳の氏には、伝統文化の普及に果たす役割も含め、和太鼓界の若い担い手として大きな期待が寄せられている。
唐子踊保存会は、素戔嗚神社の秋の例祭に神事として奉納される稚児舞・唐子踊の実施・保存・振興を目的として昭和48年に設立。以後、衣装・歌・踊りの動作などにみられる独自のスタイルを守り続けている姿勢は、岡山県の伝統文化の範となっている。また、地域文化の向上だけでなく、国際的なイベントに積極的に参加し日韓の国際交流にも貢献するなど、単なる地域芸能の保存・伝承を超えた活動は、今後更なる発展が期待されている。
平成21年度 受賞者
福武文化賞
人間国宝 藤原啓氏の次男として生を受け、幼少の頃より厳しい備前焼の薫陶を受けましたが、備前以外の焼物にも触れたいとの思いから大学では洋画を学び、後に多治見で美濃焼を修行し、その後岡山市に築窯。精力的に作品を発表し多くの賞を受賞されるとともに、後進の指導や産業振興、国際交流にも尽力されている。備前のもつ変化と志野の柔らかさを取り入れた「備前志野」(故 小山富士夫氏命名)の研究制作に取り組みブランドとして確立させるなど、「用の美」を理念として備前焼の範疇にとどまることなく作陶を行われ、あくなき探究心で常に意欲的に新境地を開拓する姿勢は高い評価を得ている。
機能性を重視しながら都市の個性と調和し、「和」のテイストまでも盛り込んだデザインは、既に全国の都市や列車に導入されている。岡山出身の氏はふるさとでの活動に尽力され、電車や船舶、街づくりのデザインなどその成果は数え切れない。とりわけ、2005年岡山国体、2009年全国都市緑化岡山フェアでの活躍はめざましく、都市の中で果たすデザインの役割と大切さを県民に認識させた功績は誠に大きいものがある。「デザインは公共のため、デザイナーは公僕たれ」との氏の思想は、優れた多くの実績を生んだ源である。
福武文化奨励賞
日本の伝統音楽の衰退が懸念される中、全国邦楽コンクール総合第1位の実力をもとに古典のみならず様々な楽器や創作舞踊、ジャズバンド等数多くのジャンルとのコラボレーションや作曲にも取り組むなど、新しい親しみやすい邦楽を模索されている。活動は全国にとどまらず世界各国に及び、邦楽の若い担い手として大きな期待が寄せられている。
自作の切手をモチーフとした作品で知られることとなった氏は、今や国際的な展覧会、美術館コレクションなどで活躍されている現代アーティストである。津山を創作拠点として、県北の子どもたちを対象としたワークショップや、自らがプロデュースして若手作家に作品発表の場を提供するなど、その活動には厚い信頼が寄せられ、今後のさらなる活躍が期待されている。
昭和54年に他界した糸操り人形師 竹田喜之助の偉業の顕彰と地域芸術の向上を目的として設立。以降30年間にわたり、人形や資料の収集展示、絵本の発行、顕彰碑の設立等着実に活動されるとともに、アマチュアサークルの育成や全国的な「喜之助フェスティバル」の中心的役割を担うなど、今後とも大いに発展を期待されている。
世界に通じる若い音楽家を発掘し育成しようという取り組みを、昭和55年から続けている。活動の中心となる「若い芽のコンサート」は主に小学生以上の若者のオーディションと演奏会を通じて、演奏のみならず音楽家としての自立も指導するもので、最近では国際的に活躍する出身者が輩出されるなどその成果は大きく、今後の活動が期待されている。
平成20年度 受賞者
福武文化賞
旧川上郡備中町で家業の手漉和紙を継承して以来、60余年にわたり和紙の製作を続けている。手漉和紙の減退という時代の中で、たゆまぬ研究と工夫を重ね、研ぎ澄まされた高度な技術から生み出される和紙は、全国の書家、画家から高い評価を得ている。さらに、備中和紙の技術的解明と後継者の養成、そして備中漆の復元にも力を尽くし、日本の伝統文化の継承・発展に多大な貢献をしている。
昭和60年に県下初の町並み保存地区に指定された城下町勝山は、行政によりハード整備が進められたが、併せて住民自らのソフトの研究と実践が行われ、現在、全国からの集客が見込める地域となった。町並みの保存、伝統的行事であるひな祭りの復活、また、地域の風情と調和し質感を高めている地元芸術家のデザインによる暖簾(のれん)の導入、文化・観光の拠点としての「勝山文化往来館ひしお」の管理・運営、そして、これらを活かすもてなしの心の育成に、地域全体で取り組もうとする活動は、伝統・文化による住民自身の地域振興のモデルとして高い評価を得ている。
福武文化奨励賞
石川県で挽物轆轤(ひきものろくろ)を学んだ後、現在、「郷原漆器の館」館長として郷原漆器の復興と継承に尽力し、廃材料を活用した製品開発や後継者の育成、地元への漆や栗の植栽など、将来を展望した活動を行っている。また、その技術と造型感覚は高く評価され、日本伝統工芸展においても各賞を受賞し、今後の活躍が大いに期待される。
福岡県生まれながら備前焼に惹かれ、山本雄一氏に師事し、平成13年には和気町に築窯し独立した。備前焼の技法を素直に継承し、丁寧に思いを込める作品づくりは高く評価され、多くの展覧会において受賞を重ねてきたが、特に、平成18年の日本伝統工芸展では、備前焼では初の日本工芸会会長賞を受賞した。今後とも、岡山県の代表的な伝統工芸である備前焼の承継・発展への貢献が期待される。
若手トランペット奏者として世界的に高く評価され、ソリストまたオーケストラメンバーとして国内外で数々の一流オーケストラと演奏活動を行い、現在はドイツで活躍している。両親が矢掛町出身という縁から、岡山を郷土として、岡山フィルハーモニック管弦楽団等との共演をはじめ、子どもたちへの指導や福祉施設におけるコンサートなど県内での活動も顕著であり、さらなる活躍と地元への貢献が期待される。
ハート・アート・おかやまが実施している「アートリンク・プロジェクト」は、障害のある人や高齢者と、岡山を中心に活動するアーティストがペアを組み、その関係の中で作品を制作し発表するものであり、既に4年間にわたり継続し大きく広がろうとしている。アートを通じて、人と人・地域・自然との交感を希求する志は高く、今後のさらなる活動の展開と社会全体への効果が期待される。
平成19年度 受賞者
福武文化賞
民俗学者として国内外の民俗調査・研究にあたり、旅の文化研究所所長、文化庁文化審議会専門委員会委員を務めるなど全国的な活動を続けている。また郷里の井原市美星町では現役の宮司を務めながら、備中神楽の研究と指導、韓国との民俗芸能の交流など、国際的視野に立った地域の文化の掘り起しと発展に画期的な役割を果たしており、本県民俗文化の進展に果たした功績は高く評価される。
吉備高原の一角にある吉田牧場で、チーズ作りに通したブラウンスイス牛、ジャージー牛を導入。ストレスの少ない自然放牧を徹底し、牧草作りや搾る乳の量を調整するなど原料乳と手作り製法にこだわり、究極のチーズ作りに成功。全国の料理人やチーズファンから支持され、我国で最も入手困難な“日本一美味しいチーズ”と評されている。また旺盛な研究心で海外のフエルミナ(チーズ農家)を訪ねて研究を重ねる一方、テレビ、雑誌などでも紹介され、岡山の食文化を全国に発信し、その功績は高く評価される。
福武文化奨励賞
岡山県古武道連盟の活動は、日本人が見失った貴重な財産である「武士道精神」等の伝統文化の復活や見直しを提唱し、このことは高く評価されている。また、30数年の長きにわたり古武道大会の開催や古武道の技と心の伝承保存、普及啓発に誠実かつ地道に取り組み、青少年の健全育成にも大きく貢献しており、他団体の模範として今後の更なる活躍が期待されている。
西洋音楽のバイブル的存在であるJ.S.バッハの作品に真摯に取り組み、質の高い活動を続けることにより、高レベルの音楽を岡山で鑑賞できる機会を提供し続けている。バッハの宗教合唱曲に関する合唱レベルは、日本を代表する団体として、音楽誌などで紹介され、高い評価を得ている。今後とも本県の音楽文化の向上に著しい貢献が期待される。
国立ケルン音楽大学で国家演奏家資格を取得し、数々の国際コンクールで受賞。オペラの本場・ヨーロッパの歌劇場で主役を務めるなど、活動の場は大きく広がっている。現在は、ドイツのマインフランケン歌劇場の専属歌手として活躍する一方、毎年岡山に帰り、リサイタルを開いたり、コンサートに出演するなど郷土岡山との交流を深めており、音楽で岡山と世界を結ぶ架け橋としても今後の活躍がますます期待される。
ソロリサイタルをはじめ、東京都交響楽団や室内楽のフルート奏者として、年200回以上の音楽祭や演奏会に出演、国内はもちろん海外にまで活動の場は広がっている。一方岡山でのソロ活動や岡山フィルハーモニック管弦楽団との共演や母校での教育コンサートなどに積極的に取り組み、郷土岡山を強く意識した活動を展開し、岡山県を代表する若手音楽家として、将来の活躍が大いに期待される。
「NPO法人21世紀の真庭塾」の活動は国、県、地元自治体から認められ、平成17年度には環境省の「木質バイオマスを活用したCO2排出削減事業」の採択を受けるなど、多くの成果を挙げている。こうした環境と産業のバランスのとれた地域づくりは岡山県内におけるパイオニア的存在となっており、今後の活躍が一層期待される。
平成18年度 受賞者
福武文化賞
備前焼作家として、古窯調査を行うとともに、大窯焼成の科学的データを収集し、古備前大窯の技術解明に心血を注いでいる。また、備前細工物に見られる型づくりの手法を一部取り入れ、陶芸の造形性と新しい美の創造に努め、本県の伝統工芸界に果たした功績は高く評価されるものがある。
日本を代表するシルクスクリーン版画家の一人である氏は、岡山県内で優れた作品を発表するとともに、各種の美術展の審査員として活躍している実力者である。また、若手芸術家の育成にも力を注ぐとともに平成16年4月には県内に在住する幅広い分野の芸術家の参加を得て岡山県美術家協会設立に尽力するなど、本県美術文化の進展に果たした功績は高く評価される。
福武文化奨励賞
600年の伝統を持ちながら、昭和20年に途絶えた伝統的な工芸品である郷原漆器の復活に平成元年から取り組み、これを軌道に乗せ技術の伝承に果たした役割は誠に大きい。昔ながらの素材を保った郷原漆器の生産技術の普及活動・後継者育成活動に取り組む姿勢は、他の伝統的技術団体の範となるよう期待されている。
大学において「地域における創作系ダンスの意義」について研究し、各地域において指導者講習に携わる一方、舞踊家として市民参加型の舞踊創作公演活動を続けるなど、型にはまらない自由な身体表現に情熱を傾けている。特に、岡山国体においては国体の華といわれる開会式の歓迎演技に関し、全体構成の企画から振付制作まで一貫して関与して岡山らしさを表現した功績は大きく、今後とも県内芸術文化の向上に著しい貢献が期待できる。
現在はイタリア(ミラノ)に在住し、テノール歌手としてヨーロッパのオペラ劇場を拠点に活動し、有望な新進歌手として高い評価を受けている。日本にも度々帰国し、郷土岡山で開催される各種のコンサートにも出演し、郷土出身の若き国際的声楽家として県民に嘱望されるとともに岡山市学校支援ボランティアとして特別授業等にも参加するなど国内外で目覚しい活躍をしており、その姿は郷土の青少年に明るい夢を与えている。
1974年の結成以来、「クラシック音楽の美しさ、すばらしさをこの上なく愛し、一人でも多くの人々に伝えたい」をモットーに32年目を迎え、当初の団員24名から現在115名の大オーケストラに成長している。歴史ある町並みにふさわしい「美しい音色とよいアンサンブル」で質の高い演奏を目指し、倉敷の文化水準を高めるよう精力的に演奏活動を展開し、地味に真面目に地域に根ざした音楽活動を続けており地域文化の向上に大いに貢献している。
平成17年度 受賞者
福武文化賞
ピアニストである岩崎淑氏、チェリストの岩崎洸氏の姉弟は、日本クラシック界の時代を支えてきた代表的なアーティストである。両氏は、戦後いち早くクラシック音楽の本場の世界へ渡り、恵まれた才能とともに、精巧な演奏テクニックと幅広い表現力の研鑽を積み重ねた。また、創造溢れる演奏法と精力的な音楽活動は、日本人のクラシック音楽への新しい意義の礎となり、現在、国内外の一流奏者との共演を続けるとともに、世界的な国際コンクールでの審査やマスタークラスの講師として活躍中である。
一方において、両氏は、郷里である岡山県の音楽文化・芸術向上のための活動に余念がなく、多大の尽力を図ってきた。特に、多忙であっても時間の許す限り地元での演奏会や特別セミナーを開催し、若い音楽家たちへ意欲的な指導を行っている。これらの活動を通して、関係するさまざまな芸術文化の高揚に寄与したことはもちろんのこと、これまでに成し遂げた功績はまことに顕著なものがある。今後もさらなる活躍と本県への芸術文化振興の貢献に期待される。
昭和21年以来精力的に詩作活動を続け、自らの詩集や同人誌を通して多くの優れた作品を発表してきた。長年にわたる努力と高潔な人間性は多くの詩人たちに強い影響を及ぼし、氏の周囲から優れた後進が輩出した。昭和34年、岡山県詩人連盟(現岡山県詩人協会)の設立にかかわり、後に理事長及び会長を歴任したり、岡山県文学選奨の審査員を12年間務めたりして、本県の文化の充実と発展に尽くした功績は顕著である。また、現在も第一線の詩人として活躍中で、本県の文化振興にさらなる貢献が期待される。
福武文化奨励賞
材質の異なる金属版を重ね、その地金をたたき延ばして成形、表面を削って木目調の模様を出す木目金の技法に取り組んでいる。素材選びや技法などにおける常識にとらわれない創意や新鮮なデザインセンスが全国レベルで高い評価を受けている。日本伝統工芸展に平成14年以来3年連続入選を果たし、15年には「朧銀木目金花器(ろうぎんもくめがねかき)」が東京都知事賞に輝いた。金工芸術の分野で岡山県に新しい風を起こした氏の活躍はますます期待される。
江戸時代中期に始められた撫川うちわは、高尚優美さにおいてすぐれて芸術的であるが、その製作にはきわめて高度な技術が要求される。本保存会は、地域の活動として発足し、昭和60年以来古くからの製法を研究し、伝統的な技法に則って製作を続けてきた。岡山県の伝統工芸品である撫川うちわの製作技術を伝承し、発展を図る本保存会の活動は本県の郷土文化の振興に寄与するとともに、地域の活性化に大きく貢献している。
絵画と彫刻を融合させたスケールの大きい作品によって、従来の規範を超えた完成度の高い作品を発表し続けている。樹脂や木材を使った立体作品や独特の絵画などで独創的な世界を現出するなど大胆な制作に挑戦し、注目を集めた。豊かな感性と旺盛な意欲に支えられた表現活動は各方面から高い評価を受け、岡山県を代表する若手美術作家として、将来の活躍が期待されている。
昭和40年、音楽を通して情操豊かな青少年の育成と市民文化の向上に寄与することを目指して設立された。以来、その目的に沿って定期演奏会のほか県外公演・海外公演を含む多彩な活動を積極的に行ってきた。岡山県の文化を支える青少年を長年にわたって育てながら、岡山から全国へ、あるいは海外へ岡山の文化を発信し続けた功績は高く評価されるべきであり、今後も意欲的、継続的な活躍が期待される。
美作地域の歴史や物語を題材にしたミュージカルを創作し、公演している。6歳から80歳までの団員が積極的に参加して、定期公演をはじめ、祭りやイベントでの公演、養護施設への訪問など、地域に密着した活動を意欲的に行っている。本劇団の活動は、地域の文化の掘り起こし、地域の活性化を促すと同時に、今後も地域と劇団が互いに心を通わせ、生き生きした地域の文化を未来へ向けて育んでいく大きな可能性を秘めている。
平成16年度 受賞者
福武文化賞
長年にわたり、岡山県の風土、歴史、文化を、民俗学・博物館学等を織りまぜた独自の視点から調査・研究して発表してきた。また、文化財の保護保存や公開に積極的にかかわり、中でも高梁市の旧家に伝わる大鎧を調査して、平安末期のわが国第一級の由緒ある甲冑であることをつきとめ、「赤韋威鎧(あかがわおどしよろい)」として国宝に指定される端緒をつくった功績は大きい。現在、全国唯一の文化財修復に関する学科をもつ大学の中核的な教授として後進の育成に携わっており、本県の文化への貢献がさらに期待できる。
古代メソポタミアやエジプトのコアガラスの復元に取り組み、芸術としてよみがえらせた功績が高く評価されている。しかも古代ガラスの技法の復元にとどまらず、独自の造形感覚で、繊細な色彩と模様を濃密に描きあげた作品は、華麗で神秘的な輝きをもって、人々を魅了している。作家の質量ともに高いレベルにある「ガラス王国岡山」の中心的存在である一方、米国の美術館に招かれたり、世界現代ガラス展に指名出品するなど、国際的にも活躍の場が広がり、世界からも注目されている。
福武文化奨励賞
設立以来約30年の間、地域に伝わる貴重な古文書の解読を続け、その成果を自作の和綴製本に整理して図書館に寄贈するなど、地域文化の発掘、伝統文化の継承に大きな役割を果たしている。会員相互に切磋琢磨して高いレベルを維持するとともに、絶えず後進の育成に努めている。会員の年齢は比較的高いが、意欲旺盛で、ユニークな生涯学習の成功例として高く評価できるとともに、今後の活動にも期待できる。
日本伝統工芸展20回の入選をはじめ、全国レベルの数々の賞に輝く有数の陶芸作家であり、近年は、県内外で個展を開催するなど、意欲的な活動を展開している。青白磁の釉薬の美しさが際立った感性豊かな作風と、常に新しい表現を追求する姿勢は全国的に高い評価を受けており、今後も、大学教員としての後進の育成を含めて、釉薬磁器分野の一翼を担う作家として一層の活躍が期待できる。
長い歴史をもつ県下最大の盆踊り「備中たかはし松山踊り」を継承するとともに、埋もれていた武士の踊りを復活したり、「見せる踊り」の充実を図ったりして、踊りの魅力づくりに努めてきた。踊りの原点である市民参加型のイベントを目指して工夫を凝らし、若者への浸透を図る企画も行っている。町ぐるみの取り組みは、観光を含めた地域の活性化に大きな貢献をしており、今後も一層の発展が期待できる。
倉敷市周辺の若手弦楽奏者で結成されたアンサンブルで、独創的な演奏会を企画し、意欲的な活動を続けている。メンバー一人ひとりの高度な技術と音楽に対する真摯な姿勢が、魅力ある演奏を生み出し、好評を博している。一方、養護施設や病院を訪問してのボランティアコンサートを、年間20~30回行い、社会的に重要な役割を果たしている。精神的にも成熱したアンサンブルの今後の成長と、社会への貢献が一層期待される。
平成15年度 受賞者
福武文化賞
木工芸作家として全国レベルで高い評価を受け、後進の育成等工芸の振興に大きく貢献している。「良い作品は良い材料から」を信条とし、良質の素材の確保にこだわって、木目の美しさや優雅な曲線をもつ作品を制作し続け、昭和59年の日本伝統工芸展での「日本工芸会奨励賞」など数々の賞に輝いた。真摯に伝統工芸の真髄を追求する姿勢は芸術家の模範であり、岡山県の伝統工芸の普及と発展に貢献した功績は著しいものがある。
永年にわたる詩作活動とあわせての評論活動や審査員活動により、岡山県の文芸振興に大きな功績を残した。「存在のなかのかすかな声」をはじめ数々の著作や独特の詩風で多くの人々に感銘を与え、評論「馬松集」でも全国的な評価を得た。また、岡山県文学選奨総合審査員として同選奨の充実、発展に大きく貢献している。戦後の岡山の詩の流れを初めて概説した「岡山の詩100年」(共著)は、その高い文献的価値を認められて「第3回岡山芸術文化賞グランプリ」を受賞し、県内の詩人、文芸愛好家に大きな影響を与えた。
福武文化奨励賞
映画ライターとして映画関係雑誌の編集に携わる一方で、映画・演劇の研究を続け、平成7年以来「CARATプロジェクトカンパニー」の代表者として本格的な演劇・映画文化の普及のための活動を展開している。岡山県芸術祭賞を受賞した「赤鬼AKAONI」の公演をはじめ、今夏に予定されている「ミュージカルファンタジー・モモタロウ ~虹のかなたに~」の脚本・演出を担当するなど、岡山での演劇・映画にかかわる地域文化の牽引者としての活躍が期待されている。
岡山シンフォニーホールを音楽文化の拠点とするために設立されたオーケストラで、岡山在住者をはじめ、岡山にゆかりのあるメンバー約40人によって構成されている。ハイレベルの演奏を目指しながら、子どもたちにも音楽の楽しさを味わってもらい、オーケストラを身近な存在に感じてもらえるよう努力を続けている。創立10周年を迎えた昨秋、東京で特別公演を成功させた。これまで年2回の定期演奏会のほか、県内巡回公演など積極的に活動しており、今後のさらなる発展が期待される。
平成14年度 受賞者
福武文化賞
日本の風土から生まれた民家の再生に取り組む6名の建築家集団で、単に古民家を文化財として復元保存するのではなく、現代に生活できる家屋に再生する活動を展開している。都窪(つくぼ)郡早島町の住民交流施設「いかしの舎(や)」をはじめ岡山県下などで100戸を超える民家、商家の再生を手がけ、写真展、講演会なども積極的に開催、地域活性化に貢献している。平成11(1999)年には日本建築学会業績賞も受賞、全国的にも高い評価を得ている。
岡山県下の音楽文化振興に大きな貢献を果たし、中でも声楽、合唱、オペラなどでは、その優れた指揮活動や音楽教育で大きな功績を残し、全国的にもその名が知られる存在である。特に全日本合唱コンクールにおいて、中国短大フラウェンコールをコンクール史上初のフェスティバル大賞に導くとともに、岡山市民合唱団「鷲羽(わしゅう)」を創立、長年にわたって国内外で活発な演奏活動を続けている。また岡山「第九(だいく)を歌う会」のように大学、高校、さらには一般、職域など、幅広く合唱団を組織して、その指揮指導に当たっており、岡山県合唱連盟理事長として県下の音楽文化振興と水準向上に尽力した。
福武文化奨励賞
岡山県下の狂言師としての活躍は目覚ましく、岡山城薪能(たきぎのう)をはじめ県内での能・狂言では積極的な企画公演を続けて、能・狂言を県民の身近に楽しめるものにした功績は大きい。特に、平成12(2000)年の後楽園築庭300年記念として自作の「晴れの国相撲」を脚色演出するなど、新作狂言の公演にも取り組む一方で、県下の小・中・高校などでの公演を通じて子どもたちや若者が能・狂言の理解を深める努力を重ねている。伝統文化の継承面でも今後の活動が期待される。
岡山県内外でオペラやミュージカル、演劇などの台本、脚本の創作を数多く手がける一方で、著作活動や地域活動にも幅広く精力的に取り組んできた。中でも平成13(2001)年末に岡山県勝北町で公演した自作のミュージカル「黒媛(くろひめ)物語」(文化庁・勝北町主催)は好評を呼んだ。また、美作地方の民話を題材にした布絵(ぬのえ)芝居を50本以上も描き続けるなど地域に根ざした文化活動は、町並みを守る「城東(じょうとう)むかし町(まち)まつり」などの地域活性化運動にも発展している。
地域と舞台芸術のつながりを創造・実践することを目的に平成4(1992)年に発足した芸術文化団体である。地方都市では鑑賞機会が少ない質の高い演劇やダンスの公演を企画する「岡山河畔(かはん)劇場」をはじめ、参加型ワークショップを企画実施する「劇塾(げきじゅく)」、県内外向けの演劇情報誌の発行、地域と劇場をテーマにしたシンポジウムを開催する「劇空間フォーラム」、さらには優れた才能ある人材を発掘する「岡山舞台芸術ゼミナール」へと活動範囲は広がっているが、地域の演劇を愛好する市民の育成やネットワークの構築にも大きく寄与している。
平成13年度 受賞者
福武文化賞
蒟醤(きんま)、蒔絵(まきえ)、彫漆など幅広い漆芸技術を会得し、一貫して品位のある漆の美を追求してきた。特に近年は、琉球漆器独特の加飾法である堆錦(ついきん)による作品で独自の世界を展開、わが国漆芸界でも高い評価を得ている。また後進の指導、良質の備中漆の育成、岡山県川上村の郷原漆器の復興支援にも尽力。岡山県重要無形文化財保持者、日本工芸会中国支部副幹事長などの立場で岡山県の漆工芸の発展に貢献している。
地方に世界の一流音楽家を招いてクラシック音楽を中心とする演奏会を開催し、地域の音楽文化に貢献することを目指して、昭和58(1983)年に大原三きょうだいによって創設された。演奏会は58回の実績を積み重ね、ウィーン・フィルの来演など、いずれも世界最高水準の演奏により聴衆に深い感銘を与えた。この演奏会には、県下の中高生を中心とした、子どもたち多数を招待するなど、地域文化の振興に果たした功績は大である。
福武文化奨励賞
観世流藤々会は、日本の古典的芸能である能楽の普及と後進の指導を目的として昭和31年に結成された。主宰の藤井千鶴子氏を中心に会員は日夜稽古と精進を重ね、能の神髄の追求に努め、定例の発表会を通して成果を広く県民に披露している。また、毎年定期的に能楽入門鑑賞会、後楽園で能を楽しむ会を開催して、能を分かりやすく一般に紹介するなど、県民を啓発して地域文化の振興に貢献する所が大きい。
子どもたちを捉えて離さない作風は、多くの人々に愛されており、「バッテリー」及び「バッテリーⅡ」は、揺れる中学生の心を克明に描きだした魅力ある作品として高い評価を得た。県内での活躍もめざましく、地元美作町の児童文学祭の企画・運営に携わり、献身的に協力するなど、優れた作品の発表を通した全国的な作家活動はもとより、地域に密着した活躍は、今後、本県文化の振興に著しく貢献することが期待される。
平成12年度 受賞者
福武文化賞
書風は、平安時代の古筆の真髄に迫りつつ、現代人の感覚で自由自在にめりはりをつけて流麗に筆を運ぶ個性豊かなものとして定評がある。今日まで、書道の大成を目指して研鎖を積むとともに、朝陽書道会会長、聖雲書道会主宰として後進の育成に努め、また、岡山県書道連盟の元会長、現常任顧問や岡山日展会会長、岡山県美術展審査員・運営委員などの立場で岡山県の芸術文化の発展に貢献している。国際化の進展に伴い、書を通して我が国固有の文化である書を諸外国に紹介し国際交流にも貢献している。
作風は、女性の微妙な生理感覚、正常と異常とのあいまいな境界線、生と死や存在と非在との複雑な回路、といった人間存在の根源的なテーマを据えながら、透明感あふれるイメージの中で独自の世界を築きつつあり、とりわけ女性の共感を得ているといわれている。芥川賞受賞は、20代の女性として戦後初めて、岡山県内在住者としても初めてのことで、岡山の文学界や女性に大きな刺激を与えた。また、「内田百閒文学賞」の審査員を務めるなど地域文化の振興にも大きく寄与している。
福武文化奨励賞
作品領域は木工の轆轤(ろくろ)による挽き物で、橅(ぶな)や欅(けやき)を素材とした盆や鉢などが多く、木目の美しさを生かし、薄くて軽く実用的であるとの評価が高い。木地師伝統の地である奥津町羽出(はで)地区を活動拠点に造形探究の傍ら、日本伝統工芸中国支部展審査員として岡山県下の伝統工芸の普及啓発にも取り組み、今後一層の活躍が期待されている。
東京芸術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻3年在学中であるが、現在はドイツのベルリン芸術大学留学中である。6歳からピアノを始め、平成元年の受賞以来、数々の賞を受けており、平成11年9月にはチェコでプラハフィルハーモニー管弦楽団とショパンの「ピアノ協奏曲」を共演している。平成12年1月にはデビューCD「ヴォカリーズ」を発表した。このような研鑽と公演活動等は、我が国を代表するピアニストとして国の内外から将来を嘱望されている。