私物に宿るひそかな物語、たくさんの普通が交差する展覧会の実施

団体名:ぬかつくるとこ
代表者:中野厚志 所在地:早島町 設立年:2013年 メンバー数:5名
助成年度:2022年度 教育文化活動助成
  • 「私物の在処 ぬかつくるとこ編」 イドノウエ展示風景_全景
  • 「私物の在処 ぬかつくるとこ編」 イドノウエ展示風景_部分
  • 「私物の在処 ぬかつくるとこ編」 室内(ハナレ)展示風景_全景
  • トーク「わかっちゃいるけど手放せない」 講師|菊地浩平(人形文化研究者) 聞き手|津口在五(本展キュレーター)

活動の目的

2022年は「瀬戸内国際芸術祭」が開催される年である。ぬかでは2年前から「そのうち国際芸術祭」という企画を行なってきた。「そのうち」という言葉は、目標に対して必ず到達しなくてはいけないものではなく、自分のペースで目標に向かうことができる魔法の言葉である。障害と健常の間にある壁も、一足飛びに越えるのではなく、「そのうち」の精神であれば、力を抜いて壁を乗り越えられるかもしれない。ぬかのコンセプト「発酵」もまた、常在菌や微生物の力を借りて「待つ態度」を大切にしており、「そのうち」という言葉にシンクロする。この度、数々のボーダレスな企画を打ち出してきた広島県の「鞆の津ミュージアム」学芸員、津口在五氏にぬか所有の半野外ギャラリー「イドノウエ」のキュレーションを依頼し、「そのうち」というコンセプトを活かした企画展「私物の在処ぬかつくるとこ編」を開催した。

活動の内容及び経過

・企画展「私物の在処ぬかつくるとこ編」の実施
会期|2023.2/7(火)-3/4(土)10:30-15:30
会場|イドノウエ(岡山県都窪郡早島町前潟126)
入場|無料
定休|日・月
主催|ぬかつくるとこ
企画|そのうち国際芸術祭
助成|福武教育文化振興財団
協力|社会福祉法人創樹会鞆の津ミュージアム
・トーク「わかっちゃいるけど手放せない」
講師|菊地浩平(人形文化研究者)
聞き手|津口在五(本展キュレーター)
日時|2023年2月19日(日)14:00-15:30
会場|ハナレ(イドノウエ横)&ZOOM
参加費|無料
参加者|20名ほど
ぬいぐるみ・わら人形・着ぐるみ・ヒーローショー・AI・アバターなど、メディアとしての「人形」を通して人間について考えてこられた人形文化研究者の菊地浩平さんをお迎えし、わたしたちの日常を支えている「非合理さ」について、さまざまにお話しいただいた。

活動の成果・効果

告知|チラシ・WEB・SNS
来場者|約200名(近隣地域、県外、関係者、メディア、家族含)
トークイベント観覧者|20名ほど(オフライン13名・オンライン7名)
他人には何の変哲もなく、「ごみ」同然。だけど、持ち主にとってだけは他をもって代えられない。あるいは、なぜか捨てるに捨てられない「宝」のようなもの。そんなごく私的な価値を持つ私物をお伝えする本展。ぬかに関わりのある人物25名へ津口氏が個別に聞き取りを繰り返し、私物にまつわる物語を400字にまとめたテキストとともに展示をした。極めて私的な物語はそれを読む者に人生の断片を提示する。捨てられない物たちは捨てられない故の理由があり、その理由は持ち主の体験や人生に根付いているためだ。また、私物が大切だと思う「物差し」は出展者にとって様々で、他者の私物やそれにまつわる物語を知ることで自分の物差しとの差異を感じたり、はたまた共感を覚えることもある。このように、誰しも持っている「私物」を紐解き並列させることで、「福祉」や「芸術」に捉われないボーダレスな人間の多様性を具体的に俯瞰することができ、出展者を含めた鑑賞者に対して何らかの気づきを与えるものとなった。

今後の課題と問題点

会場である「イドノウエ」は小学校の登下校ルート沿いでもあり、また、ほど近い(隣の隣の敷地)に地域の幼稚園があるため、目の前を通る園児や保護者、小学生がしばしば立ち寄ってくれた。だが、地元中学校やその他ステークホルダーを接続することへのアプローチが少し弱かった印象もある。興味関心がある人への情報発信はSNSなどを通して可能だが、地域の方への広報が課題だ。

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