『対話力』の育成を目的とした新しいコンテンツの開発とその検証

団体名:クリエイティブゲーム振興会
代表者:孝壽真治 所在地:岡山市 設立年:2019年 メンバー数:5名
助成年度:2021年度 教育文化活動助成
  • 11月テストプレイの様子
  • 配信イベントでの企画紹介の様子
  • 2月テストプレイの様子
  • 作成中のホームページ

活動の目的

プログラミング教育の必修化によって重要となったプログラミング的思考の獲得を目的として、プログラミングを活用した教育が盛んに実施されている。しかし、実際のプログラマーは、一人で目的達成の為の最適な手順を考えて(=プログラミング的思考をして)プログラミングしているわけではなく、様々な人と話し合いながら、目的達成の為の最適な手順を考えるのである。そのため、プログラミング的思考をマスターするには、他者と話し合うためのコミュニケーション能力や、目的達成の為のアイディアを出すクリエイティビティといった非認知能力も必要となる。
私たちは、ゲーム制作を通して高校生がプログラミング的思考を学ぶと共に、ゲームシナリオの物語構造やキャラクターの行動を学習する中で、コミュニケーションに不可欠な『自分自身の考えを言語化して正しく相手に伝える』ために必要な表現方法を、物語の表現手法から学ぶ(=対話力を鍛える)ことを目的としてイベントを企画した。

活動の内容及び経過

当初は、簡単なコンピュータゲームの作成過程を通して、参加者のプログラミング的思考と対話力を実践的に鍛えるイベントを計画していた。
だが、コロナ禍において企画のオンライン化を検討する中で、画面越しでは表情が伝わりにくく、対面時よりも言葉で正確に自身の考えを伝えることが重要だと分かった。このような状況の中で、対話を苦手とする人がいきなり実践形式で対話力を鍛えるのはハードルが高いと考えられる。そのため、イベントでは段階的に対話を鍛える仕組みが求められた。
そこで、私たちはテーブル・ロールプレイング・ゲーム(TRPG)と呼ばれる「参加者が物語のキャラクターを自身で創作し、そのキャラクターになりきって、コンピュータではなく、ファシリテーターの進行と参加者同士の対話によって物語の世界を遊ぶ」テーブルゲームの手法を取り入れることで、参加者の対話力を段階的に鍛えるパート(=TRPGパート)をイベントに組み込むことにした。
2021年度はこのTRPGパートの作成に取り組み、その効果検証を目的としたテストプレイを11月と2月の2度にわたって実施し、岡大生12名社会人6名から様々な意見をいただいて、これを反映させながらTRPGパートを作成した。

活動の成果・効果

TRPGパートの作成にあたって、既存のTRPGのシナリオを利用してTRPGパートの内容を企画するのでは、対話力を鍛えるという目的が十分に果たせないと思われた。そこで、私たちは対話力の育成を目的とした全く新しいTRPGの開発のために、さらなる資金調達を行い、「岡山市学生イノベーションチャレンジ推進プロジェクト」から助成をいただいて、コンテンツ開発を行った。
開発したTRPGの効果とイベントにおける運用方法を検証するために実施した、テストプレイでは、参加者からの好意的な意見を多くいただいた。
【大学生からの意見】
「大学での教育は、技術や知識を学ぶ要素が強いが、対話する力や思考する力を日常の中で意識する絶好の機会だった」
【社会人からの意見】
「意見を明確に、簡潔に発信する力。相手の意見を尊重することを学ぶことができる」
また、テストプレイを通して、TRPGパートの対話力を鍛えるという効果は、当初対象としていた高校生だけでなく、大学生や社会人などにも通用するものであるという可能性を感じることができた。

今後の課題と問題点

一方で、コンテンツの開発に時間がかかってしまい、当初の目的であったイベントの実施に至らなかった。現在は、共同開発を行っている岡山大学国吉康雄記念研究講座と、岡山大学において2022年度の教養科目として実施するために、コンテンツのさらなる改善を進めている。
また、イベントの構成上どうしても長期間における参加が必要となるため、参加のハードルが高く、問題となっている。
そして、開発中のコンテンツは、ホームページ上にて誰でもプレイ可能な状態での公開を目指しているが、ゲームの進行を行うファシリテーターに一定以上のファシリテーション能力が要求されることが自由なプレイのハードルとなっている。そのため、ゲームのファシリテーターの育成が今後の課題となっている。

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