曹源寺を実測調査し平面図、立面図、断面図を「曹源寺・禅の建築」作成

団体名:NGO 永忠陽明禅塾
代表者:小嶋光信 所在地:岡山市 設立年:2015年 メンバー数:20名
助成年度:2016年度 文化活動助成

目的

曹源寺周辺地域も過疎高齢化が進み自然環境も荒れている。幸い境内は外国人修行者の作務により維持整備されているが、創建当時(1699年)の建物は相当傷んでいる。曹源寺は池田家の菩提寺で檀家がない。曹源寺を守る会が色々と援助している。図面が無いので実測調査をし、調査報告書を図面として印刷し文化財登録に向けて貴重な地域文化財の修復保全、日本の伝統文化、禅と国際交流の拠点として市民(特に若者)への普及をはかることを目的とする。

内容・経過

有志13名により曹源寺を実測調査し平面図、立面図、断面図を作成。「曹源寺・禅の建築」として1000部を出版。
岡山県建築士会ヘリテージマネージャー機構備前地域会の有志13名により7月から10月にかけて曹源寺の仏殿、ねむり塚、経蔵、開山堂、三重塔、山門にそれぞれチームに分かれ実測調査した。平面図は実測できるので比較的楽であるが、断面図、立面図は大変であった。特に三重塔は山の上にあり、脚立や器具を運ぶのも大変で、天井裏で柱をよじ登り狭くて暗い中実測調査した。それぞれが家に持ち帰り、手分けして平面図、立面図、断面図を作成した。それらの成果をまとめて3月に「曹源寺・禅の建築」として出版した。曹源寺での土窯プロジェクト「禅と備前(Zen&Be-zen)展」の一部も掲載した。

成果・効果

山陽新聞朝刊に記事として掲載され、市民が建築士会事務局へ取りにきた。岡山県、岡山市の文化財課、岡山県立図書館、岡山市立図書館等に贈呈。今後の文化財登録、維持管理、修復等に役立ててもらう。

今後の課題と問題点

仏殿の北側の外壁や山の上の三重塔等一部にかなり傷みの激しいところがある。できるだけ早急に修理する必要がある。曹源寺を守る会や岡山県、岡山市の文化財課等に働きかけ、早い段階で修理する必要がある。表書院の東側の心字池は後楽園を完成した津田永忠と絶外和尚が作庭した。春には前の住職が植えた彼岸桜が満開で多くの人が訪れる。奧にはねむり塚がある。山陽放送の創設者谷口久吉の句碑である。三木行治元知事が提唱し、設計前川国男、施工は彫刻家流政之が行った。建物だけではなくねむり塚についても今回実測し図面を載せた。実測とは、実際に磁石やスケールを使って測量するのであるが、対象物の感性すなわちそれを実際にデザインして造った人の感性が実測することで直に体に伝わってくる。空気に浸り光に包まれながら、プランや断面で表せない本当の空間がわかってくる。空間とは頭で考える概念的なものではなく、切ったら血の出るみずみずしく受肉したものである。光と風と材質と発想が完全に溶け合い敷地全体さらに隣もその向こうも含めて環境の風土の中にどっぷりと浸り、つくる者自身もその中に全く溶解しきって空無と化し去った状態−これこそ空間だ。無我主体。知行合一。建物だけでなく庭の樹木を実測し配置図をつくり、禅の庭を記録し受け継ぐことで、この先へ繋げていくことが次の課題だ。

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