ICT活用と協同学習を取り入れた授業改善による学力向上

団体名:総社西小学校授業改善研究会
代表者:井上克彦 所在地:総社市 
助成年度:2013年度 教育活動助成
  • 写真1 ICT活用研修会
  • 写真2 授業研究 ICT活用
  • 写真3 協同学習で学び合い

研究・実践活動のねらいと期待する効果

1ねらい
総社市教育委員会によりICT機器が普通教室に整備されたが、十分に活用できているとはいえない状況だった。その理由としては、教員がICT機器の操作に慣れていないこと、活用したいがどう活用すればよいか分からないでいたこと、多忙観に追われて活用できていないこと等であった。そこでICT活用の研修を行えば、ICT活用の操作に慣れ、ICT活用の効果を実感でき、日常的に活用できるようになり、ICTの効果的な活用もできるようになると考えた。
本校の児童は、自分の考えを伝えたり、発表したりすることを得意とする児童が少なく、学びが深まりにくい傾向がある。そこで、ICTを効果的に活用すれば、学習に対する関心意欲が高まり、課題把握や課題解決方法の理解が進み、発表力が向上し、学力の向上が図れると考えた。
また、総社市では不登校対策として「誰もが行きたくなる学校づくり」に取り組んでいる。この取組の中に児童同士の学び合いやサポート場面のある「協同学習」がある。この「協同学習」により、児童は安心して自分の考えを発表できたり、友達の考えを知ったりし、学び合いの楽しさを体感し、積極的に学習に参加できるようになっている。
このICT活用と協同学習を組み合わせた授業を展開すれば、自分の考えをまとめ、グループ内で考えを伝え合い、全体でICTを活用した発表で思考が深まると考える。また、既習事項やわかったことをフラッシュ型教材で反復し、知識の定着を図ることができると考える。この取組が定着すれば、授業改善が進み、児童の関心意欲、思考力、表現力を高め、知識理解が進み、学力の向上が期待できると考える。

2期待した効果
今回の研究で、ICT活用と協同学習を組み合わせた授業改善の研究で、どんなICTをどの場面でどう活用することによって授業を改善することができるのか、どんな学力の向上を図ることができるのか、効果的なICT活用と協同学習の組み合わせ方はどうか等を明らかにできるだろう。また、わかったことをどんなフラッシュ型教材にすれば、児童の理解が深まるのか等も明らかにできるだろう。そのためには、ICT環境の整備や教員のICT活用研修、授業評価や研究協議のあり方なども明らかにできると考える。さらに、この研究に取り組むことによって、教員の意識改革が図られ、授業改善が進み、児童の人間関係作りが促進され、学ぶ楽しさや学びの深まりが進み、学力の向上が期待できると考える。

研究・実践活動の内容と方法

1ICT活用研修会
夏期休業中に、岡山県総合教育センター情報教育部片山淳一指導主事を講師に招聘し、校内研修だけでなく、総社市研修所情報教育班をはじめ総社市全体へ案内して開催した。内容としては、ICT機器の接続、大きく映すポイント、大きく映した教材の焦点化、提示後の発問を中心にし、模擬授業の形式を取り入れて研修を行った。大きく映すポイントでは、学習課題としてふさわしいもの、児童の関心意欲を喚起できるもの、課題解決方法の理解を促進できるもの等を参加教員が選択した。授業で活用することを前提として教材を選択し、どこをどう大きく映してどんな課題をもたせるか、不要な部分は県総合教育センター情報教育部が開発した「かくすもん」(映したくない部分を覆う道具)を活用して必要な情報のみ提示する、どこに下線・○で囲む・指し示すで焦点化させるか、どう発話するか等をグループで協議した。模擬授業の形式を取り入れたので、すぐ授業で活用できる研修内容となり、ベテラン教員の高い指導力を若い教員に伝達できる機会にもなった。ICT機器の操作はグループで教え合ったので、操作に不安を持っていた教員は、すぐに操作できるようにスキルアップすることができた。

2授業研究会・情報教育研究県大会
第1・2・3・4学年は算数科、第5・6学年は体育科でICT活用の授業研究を行った。算数科では、フラッシュ型教材で既習事項の復習、デジタル教科書で課題提示、課題解決のための操作、実物投影機で児童が協同学習でノートにまとめたことを大きく映して提示しながら発表した。体育科では、デジタルコンテンツを提示して運動のイメージをつかませ、デジタルカメラやタブレットコンピュータで動画を撮影してグループで再生して見ながら課題解決へ向けた話し合いをしたり、ビデオカメラで撮影した動画をDVDで遅延再生して動きを確認したりした。指導案検討ではICT活用研修会の成果が発揮され、模擬授業を取り入れた研究を行った。

得られた成果及び評価

ICT活用研修会後、すべての教員が日常的にICTを活用する姿が見られるようになった。特にICT機器の操作に不安感を抱いていた教員が研修により不安感を払拭でき、ICT活用の効果を実感し、授業改善が大きく進んだ。教材を大きく映すと児童の視線がスクリーンに集中して関心意欲が高まり、言葉で説明するより児童の理解が早くなり、授業の効率化が進んだ。デジタル教材の活用で教材の準備も効率的となり、教員の負担も軽減された。その時間を児童の話し合いや教員の教材研究の時間に活用することができた。デジタル教科書のアニメーション機能は児童の関心を大きく高め、集中力を高めるとともに、電子黒板のスクリーン上を操作しての児童の考えの発表はわかりやすく楽しい学習となった。その結果、児童の90%以上が授業がよくわかると回答した。ICTの活用は、導入時の意欲付け、課題提示、課題解決の理解の場面で大きく映して焦点化したり、前時の復習や本時のまとめをフラッシュ型教材として活用したりすると効果的であることがわかった。デジタル教科書は電子黒板との組み合わせで効果が発揮できた。
協同学習での学び合いは、ICT活用による課題把握の容易さで話し合い活動の時間が十分確保でき内容が充実できた。ノートを大きく映しての発表は、わかりやすくノートにまとめる力を伸長し、口頭だけの発表よりも素早く考えを伝達することができるようになった。スクリーン上で示しながらの発表は発表児童とスクリーンが同時に視聴している児童の視界に納まり、わかりやすさを増大させることができた。

残された課題とその解決への展望

ICT活用研修により教員の指導力が向上し、授業改善が進み、協同学習との組み合わせで課題解決の時間が確保でき、発表力や理解力は高まった。ICT活用と協同学習を組み合わせた授業改善モデルを「西小スタンダード」として整備することができた。しかし、学力調査での学力の伸びが十分ではなかった。その原因と分析が十分できなかったので、今後検証し、学力向上へ向けた取組をしていきたい。ICT環境整備については予算の問題が大きいが、黒板と電子黒板が併用でき、配線が邪魔にならない左右スライド型ホワイトボードに電子黒板内蔵長短焦点プロジェクターが固定されたものがICT活用の効果が発揮できると考える。

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