国指定の天然記念物、鯉が窪湿原の湿性植物群落の保全活動
代表者:小原満繁 所在地:新見市 設立年:2002年 メンバー数:26名 助成年度:2011年度 文化活動助成
目的
鯉が窪湿原の湿性植物群落は、昭和55年に国から天然記念物の指定を受けた。平成14年、旧哲西町は湿原の入り口に教育管理棟を建て、そして湿原のエントランス部分にミニ湿原を整備した。このことを契機として地元の有志の間に、鯉が窪湿原の保全についての気運が高まり、「鯉が窪湿原を守る会」が結成された。以来、今日まで湿原の希少な植物とその生態系を守るための活動を地道に行っている。
経過
7月20日、まさに湿原への侵入のおそれのある周辺部のオオキンケイギク、フランスギク、マーガレットなどの外来植物の除去作業を行った。
9月17日、「グリーンデイ2011」の関連行事として、湿原の「ウオッチングツアー」を実施した。当日は生憎の雨模様の天気にもかかわらず、遠くは岡山、倉敷、総社方面からの参加もあり、地元も含めて21名の参加者があった。
11月25日、湿原を守る会と地元哲西中学校との共催で、環境教育講演会を開いた。この講演会には、永年「鯉が窪湿性植物群落保護対策協議会」の会長を務めていただいている岡山理科大学長の波田善夫先生を講師としてお迎えした。先生には講演のなかで、鯉が窪湿原の成り立ち、湿性植物群落が国の天然記念物として指定を受けた理由など、また湿原を守ることがひいては私たちの生活環境を守ることと深く関わっていることなどについて、分かりやすく大変有意義なお話をしていただいた。86名の参加者があった。
11月27日、守る会の最大行事である、湿原の保全活動に取り組んだ。今回は哲西中学校生徒、保護者、教職員そして新見高校生徒や守る会の会員、地元有志、JR新見駅からの参加もあって、総勢150名を超える大勢の方々の協力が得られた。当日は、ミニ湿原の雑草の刈り取り、抜き取りそしてそれらの雑草の湿原の外への搬出、さらに土嚢の積み込み作業などを中心として、湿原の原状回復に汗を流した。
成果
湿原全体の乾燥化を進め、湿性植物群落の大敵となっているススキや根ザサの大部分を除去することができた。また大雨のために湿原の中が深掘れして、湿原全体に水分が行き渡らなくなっていた部分に、土嚢の積み込み作業を行って、全体に水分が行き渡るようにできた。また今回の活動を通じて、地域の宝とされる鯉が窪湿原の存在を改めて大勢の人に再認識してもらうことができた。とりわけ、湿原保護の次の世代の貴重な担い手でもある中学生が積極的に参加して、非常に熱心に作業に勤しんでいる姿が印象的で、頼もしく感じられた。この背景には、活動直前の講演会によって、湿原の保全のためには、丁寧な保護活動を、継続的に行うことが大切であることを学んだことがあげられる。中学生が見違えるほど積極的に取り組んだことにより、全体の士気が上がり、作業が予定以上にはかどった。
今後の課題と問題点
近年、湿原の乾燥化と富栄養化の問題に直面している。周辺樹木の生長による影響を除去するために高木樹木の伐採を行ったり、土嚢の積み込み作業を実施するなどの対策を進めている。しかし湿原の面積が大変広く、その対策を全体に進めることがなかなか困難である。湿原を草原に変えてしまうことを防ぐための抜本的対策を検討しなければならない時期に来ている。また湿原の保全活動に年間を通じて関われる人の数があまりにも少ないこと、予算措置が貧弱であることなども大きな課題である。
地域の貴重な自然の財産でありながら、地域の人たちの関心が高まらない。地域の人たちにもっとアピールできる方法を工夫する必要がある。