おかやまスケッチ

「生きものさし」でつなぐ過去と現在、そして未来

環境学習プラザ「アスエコ」所長 山田哲弘

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  • 2025.02.07

岡山の街中で育った私にとって、幼い頃から岡山城周辺や西川緑道公園で過ごした時間は、とても大切な宝物です。夏の楽しみといえば、元気に鳴いているセミを捕まえること。様々な場所を自転車で巡りながら、虫取り網を片手にセミを追いかけるのが私の日課でした。45年前、小学生だった頃、アブラゼミ、ニイニイゼミ、ツクツクボウシがよく捕獲できるセミで、クマゼミを捕獲した時は、その珍しさから友達から羨望の眼差しを浴びた記憶があります。

2008年から環境学習センター「アスエコ」では、西川緑道公園で「セミと緑の調査隊」という自然観察イベントを始めました。子どもたちと一緒にセミの抜け殻を集め、その種類と数を記録し残しています。昨年度までの結果をまとめると、アブラゼミが321個、ニイニイゼミとツクツクボウシがそれぞれ7個に対し、クマゼミの抜け殻は7933個でした。変化の理由は、セミに直接聞いてみなければ分かりませんが、地球温暖化やヒートアイランド現象が影響していると言われており、45年間で私たちの環境が大きく変化していることをものがたっています。

このような変化を理解するために、「生きものさし」という考え方が役立ちます。「生きもの」と「ものさし」を合わせた造語で、生きものの変化を通じて、環境の変化を捉える指標のようなものです。幼い頃に公園でセミを追いかけた経験と、アスエコでの継続的なイベント開催で、私の「生きものさし」は時間を経て大きく成長しました。このように過去と現在を比較することで「生きものさし」が育ち、未来に向けて環境問題の解決策を探ることにつながると考えています。

私の「生きものさし」の一つである、身近な自然で起こったセミの数の変化は、地球からの重要なメッセージ。この重要なメッセージに気づいたら、あとは行動するだけです。

小さな一歩として、身近な自然に目を向けること。例えば、子どもたちと一緒に近くの公園や川へ行き、色とりどりの花や昆虫、魚たちを観察する。子どもにとってはそれが基準となり、大人にとっては過去と比較する貴重な時間になりますし、身近な自然の素晴らしさや大切さを同時に伝えることで、身近な自然環境の大切さを学ぶことができると思います。

小さな一歩の次は、具体的な今すぐにできることが大切。日々の生活で環境に配慮された製品を選ぶ、水や電気を効率よく大切に使う、ゴミの分別をしっかり行うといった具体的な行動は、一人ひとりが取り組めば、地球全体に大きな変化をもたらします。

私は、皆と一緒に力を合わせて、地球とそこで暮らす全ての生き物が調和した、そんな持続可能な未来を目指したい。あなたの「生きものさし」を通じて、環境に対する新たな理解と行動が広がることを心から願っています。

〈出典〉ふえき 85号(2024年9月25日)