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地域を盛り上げる「吹屋の紅だるま」

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  • 2022.06.14
吹屋の紅だるま/絵・タケシマレイコ

2015年の冬、私は地域の宴会で出てきた赤い柚子胡椒と出合いました。聞けば隣町で作ったとっておきの自家製柚子胡椒だという。コーヒーの空き瓶にパンパンに入れられた真っ赤で攻撃的な見た目。恐る恐る鍋に溶かしてみると、華やかな柚子の香りに心を掴まれた。そして、目が覚めるような唐辛子の刺激! 頭から湯気が出た。

この柚子胡椒は今まで出合ったどの辛味調味料とも違い、衝撃的な美味しさでした。紅色の顔料「べんがら」で栄えた赤の町「吹屋」を表すに相応しい調味料だと感じ、「この柚子胡椒で地域を盛り上げたい!!」そう決意しました。そこからレシピを教わり、地域の人の多大な協力を受けながら、吹屋の新たな特産品作りが始まりました。柚子胡椒の原料となる赤唐辛子を栽培し、寒暖差で磨かれた完熟ゆずを集め、ひとつひとつ丁寧に加工。初めのうちは火を吹くような唐辛子の刺激、体を突き刺す棘だらけの柚子の収穫作業で全身ボロボロになりました。

2016年、満身創痍で作り上げた赤柚子胡椒ができ、吹屋の繁栄の願いと手に取った人が幸せになるように願いを込めて「吹屋の紅だるま」と名付けました。初めて食べたあの日のように、私たちが味わった感動を届けたい。佐藤紅商店は辛味調味料を通して、ピリリと辛い感動と喜びをお届けします。

〈出典〉fueki74号/2021年1月25日