おかやま風(ふう)

VOL.2 世界からみた日本茶

株式会社引両紋 青山雅史

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  • 2022.04.22

今回は僕がヨーロッパにお茶を販売しに行った時のお話をさせていただきます。何故ヨーロッパなのか、ヨーロッパで飲まれている緑茶は? など、世界からみた日本茶の位置づけを、経験談からお伝えをさせていただきます。

海外に輸出しようと思ったキッカケは、東京の百貨店で販売をしている際に、海外旅行に来ている方、特にヨーロッパの方々が日本茶(茶葉とティーバッグ)を大量に買っていく姿を目にすることが多かったからです。海外展開なんて考えてもいなかったですが、ニーズがあって、しかも日本茶は乾物なので重量が軽いわりに単価が高いのも魅力だと思い、すぐに輸出について調べてみることにしました。

知り合いも少なかった僕は、百貨店の海外担当の方に聞いたり、JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)に問い合わせたり、農水省のホームページで調べたり、本を読んだりと、当時の僕の思いつく全ての方法で徹底的に調べました。すると僕の想像していた全体像とは違うものが見えてきました。

少し古いデータですが、2012年の輸出額の割合はアメリカが46%、シンガポール15%、ドイツ9%の順で、EUのみならずヨーロッパ全体における茶貿易の中心は意外にもドイツでした。その中でも再輸出を通じて茶貿易におけるハブの役割をドイツの都市ハンブルグでおこなわれていること。ドイツは自国で消費する量より再輸出の量が圧倒的に多く、再輸出先の約60% が、フランス、イギリスなどのEU加盟国向けであること。しかし、紅茶の文化のあるEUでなぜ日本茶の生産量の全体の15%しか輸出できていないのか。

大きな原因の一つは、日本で生産された日本茶のほとんどが、EUにおいての「残留農薬(食物に残った農薬)」の基準値を超えていたり、EU内で認可されていない農薬を使用している場合が多いため、EUに輸出できないことがわかりました。ただ、僕たちの茶畑は幸いにも農薬を使用していなかったので、検査機関に調査をして、無事に輸出できることになり、一安心したことを覚えています。輸出を意識する前から何故農薬を使っていなかったについては、お面白い話があるので次回、またお話しますね笑

輸出の障害もなくなったので、輸出の計画の話を僕の知人のスペインに在住の芸術家の先生に相談して、スペインのマドリッド、バルセロナを拠点にドイツ、イギリス、フランスと3ヵ国を周ることに。約10日間で、東京の百貨店の方にイギリスの有名百貨店を紹介してもらったので打ち合わせを、次にドイツのJETROに連絡をとりハンブルグの情報を集めて現地の問屋を紹介してもらい打ち合わせを、最後にフランスで日本企業が展開する日本茶専門店の視察、最後にスペインのバルセロナの美術館でデモンストレーションをさせていただきました。かなりハードスケジュールでしたが、手応えもあった濃厚な10日間でした。しかし、実際に輸出をスタートして、初めは順調でしたが、すぐに注文はなくなりました。

原因の1つが価格です。EUで販売されている緑茶のほとんどがインド産です。インド産の緑茶は紅茶の収穫が終わったあとの合間に作っているため、日本人の思う緑茶と味も大きく違いますが、100g600円程度と非常に安価な値段で販売されていました。日本で販売している100g500円くらいのお茶が海外では2000円くらいで販売をされていました。日本から海外に物を届けるには、陸送は無理なので飛行機か船しかありません。食品などの発展途上国でも作れるものを、先進国で作って輸出、(例、インドで紅茶を作ってEUで消費、アフリカでコーヒーを作ってアメリカで消費)には無理があることがわかりました。しかも、日本茶の生産量は1950年代から比べると年々減少しているにもかかわらず、輸出量は全体生産量の1割強くらいということを考えると、日本茶は完全に日本人の為の物だと気づきました。

この失敗をキッカケに僕たちの目標は明確になり、「岡山県産のお茶が岡山県内で消費される文化へ」となっていきます。次回は意外と知らない日本茶の歴史と岡山との関係をご説明させていただきます。