アンケート調査結果からみえてきたもの
青尾謙×成清仁士
本アンケート調査事業のアドバイザーである青尾謙さんが調査結果を踏まえながら、当財団の助成金のほか、トヨタ財団の助成金や行政の補助金も活用した経験を持つ成清仁士さんにリアルな声を伺いました。
青尾 アンケートに回答されて、どんなことを感じられましたか。
成清 「倉敷の各時代の復元地図及び歴史遺産案内地図の作成と、その活用」で2010年度に3カ年助成をいただいて活動したのがスタートで、その後いろんな人と繋がりができ、展開がありました。昨年岡山に戻ってきてライフワークとして再稼働させていますが、振り返ってみると、そういった立ち上げのきっかけを作ってもらったということを感じました。
青尾 教育文化活動助成は一種の登竜門。鯉が竜になっていく上での大事なステッピングストーンでないかと思っています。
成清 まさに滝の手前の池にいた鯉だったなと。博士課程の3年次の学生だったんですが、本当に企画書しかないわけです。企画書の段階で拾い上げていただいて、すごくありがたかったです。そこからまさに滝を登りだしたのかなと思います。
青尾 その3年間、また助成を受けられた後はどういう感じで展開していきましたか?
成清 2年目の秋ごろにトヨタ財団の助成に応募して採択されて、3年目には教育文化活動助成とトヨタ財団の助成を受けて活動しました。5年目には全国商店街振興組合連合会の活性化事業補助金の紹介を受けて、商店街と連携する形で活動しました。
そこまで5年間、ものすごく展開したと思います。
青尾 活動をやってみて地域の実情を知る、それによって新しい活動を展開していくことはありますか。
成清 最初の1年目は自分できること、2年目3年目と続ける中で、人に協力を求めながら、迷惑をかけながら、活動をひろげていったという感じです。すごく成長をさせてもらいました。
青尾 アンケートの最初の質問は、「助成金を受けた当時と比べて現在の状況はどうなっていますか」でした。もちろんコロナの影響で中止や延期というのも多いのですが、発展させている、同規模または縮小して継続しているというのが約7割。これは僕からすると驚きでした。
成清 そうだろうなという気がしました。僕も何度か応募していて不採択になったこともありますが、だからといってやめるということにはならないし、やろうとした活動ができなくなることはあると思いますが、問題意識は持ち続けていると思います。
青尾 「助成を受けた当時の活動の変化と団体の変化」という項目では、規模拡大の基礎作りに役立ったとか、知名度・信頼度が上がったと、非常にポジティブな効果が言われています。非常に積極的に評価していただいているところがあります。
成清 自主的な活動が多いと思うので、外部評価を得たことで「期待されている」「認められた」いうところが「自信」につながっていったのでは。しっかりとした基盤のない状態でスタートすることもあると思うので。僕の場合もそうでしたが、財団の助成を得たことで、がんばってねとか声をかけていただくのが、すごく強い力をいただいた気がします。
青尾 フォローアップについての回答では、「支援があることを知らなかった」という声もありました。
成清 時々財団に行って、近況報告をさせてもらって、方向性を確認できたり、元気をもらったりしたような気がします。が、フォローアップしてもらうという意識ではなかったです。
青尾 最近はコロナ禍でなかなか集まれないので、オンラインで情報交換会を財団では実施していますが、どう思われますか。
成清 すごくいいと思いますね。オンラインの情報交換会は、全然お会いしたことのない方の活動をじっくり聞くよい機会になっています。顔が見えるじゃないですか、それを経た後、以前のような対面で400人参加する発表会、交流会が実施できた際には、それがさらに良きものになるのではと期待をしています。
青尾 こういう長い期間、コミュニケーションが途切れてしまうと、それでだいぶん距離が広がってしまうので、お互いの顔を見ながらつながっているんだという感覚が得られるのはとても大事ですね。
青尾 財団に期待したいことはありますか。
成清 「地域の魅力をつくっている」そういった役割を期待しています。地域に魅力を感じるのって、人に魅力を感じているのだと思います。行ってみたいな、住んでみたいな、交流してみたいな、そういうのが一つひとつではなくて広がっていくから、岡山県って面白いなというふうになっていくと思います。財団の助成を受けて活動している方は、みなさん元気で、魅力的な人が多いので、学生たちに、接点をもたせてあげられたらと思ってます。
青尾 岡山県に来て3年ですが、地域ごとに魅力がある地域だと感じています。例えば足守は、全国的には知名度は低いかもしれませんが、すごくすてきな街並みがあったり、歴史的な建物を紹介してい見やすいきれいな地図があって、はしっこを見ると、財団の支援を受けましたと書いてあって、なるほどと。そういう地域ごとの、地域とか人の魅力を生き生きと保っていく、向上させていくというのが、この財団のお仕事の積み重ねなんだろうと感じました。
(2021年9月25日 FUEKI No.76)