おかやま風(ふう)

VOL.1 県産のお茶が県内で消費される文化目指して

株式会社引両紋 青山雅史

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  • 2022.04.01

はじめまして。岡山県産の日本茶を販売している株式会社引両紋の代表取締役の青山雅史です。僕たちは「岡山県産のお茶が岡山県内で消費される文化」を目指しています。この目標は「SDGs」や「地産地消」といったことを参考にしたわけではなく、僕たちが岡山県産のお茶を販売した経験から見えてきた目標です。どのような経緯でこの目標に至ったのか……。

 まずは、岡山県産のお茶の現状について。
 岡山県産のお茶は全国の生産量の約0.3%しかありません。もともと岡山県産のお茶は、有名産地のお茶と混ぜて消費をされていたため、岡山県産のお茶として消費されることはほとんどありませんでした。また、岡山県では真庭市勝山と美作市海田にお茶の産地がありますが、どちらも県北で寒いため、有名産地が、茶摘みの歌にもある「夏も近づく八十八夜(五月上旬)」にお茶を摘み始めるのに対して、県内産地では5月中旬~下旬にしかお茶を摘むことができないので価格決定権がありません。しかも時代も変わり、お茶以外の飲み物の選択肢もでてきている今、お茶業界は非常に厳しい状況にあります。

 有名産地の元になるお茶を生産しているならクオリティは問題ない。あとは岡山県産のお茶として販売をするだけと、僕は意気込んで地元の百貨店やスーパーに営業に行きました。当時23歳だった僕には世間の風は厳しく、「SDGs」や「地産地消」という概念もまだ浸透していなかったのもあり、「岡山県産のお茶?」みたいに相手にされませんでした。 

 そこで、岡山県で販売が難しいなら、まずはブランディングと考え、たくさんの方々に協力してもらい、東京の新宿にある大手百貨店で販売をスタートすることになりました。当時の僕は「全国の方々に岡山産のお茶のクオリティの高さを証明できる」と思って取り組みました。取り組んで2年。たくさんのお客様とお話をさせていただきましたが、実際、購入していただいたお客様のほとんどが「岡山が地元だ」「岡山に住んでいた」「岡山に行ったことがある」「岡山に親戚、友達がいる」など、岡山にゆかりのある方々ばかりだということが分かりました。 

「岡山県産のお茶を本当に求めてくれているのは岡山県の人たちだ!!」

 ただ、岡山県内だけで本当に商圏として成り立つのか。総務省の統計の1人当たりの年間の消費量は827g。岡山県の人口は約190万人。岡山県内で消費されている量は年間で約1600t。岡山県産のお茶の生産量は年間約130t。つまり、生産量より消費量が多いなら、わざわざ県外に持って行く必要はない。そんなことより、今消費されている「形」と「価格」に合わせることが大切だということに気づきました。これこそが「地産地消」だと。しかし、「地産地消」という切り口で販売をされているものはたくさんありますが、本当に「消費」されているでしょうか? 今消費されている「形」と「価格」に合わせること。これができて初めて消費される可能性があると僕は考えています。そのためには生産者の努力はもちろんですが、販売者にも協力をしていただき、一緒に取り組んでいただかないと消費まで見える本当の「地産地消」は難しいと思いました。

 2010年に起業して今年で約12年。今では僕たちの「岡山県産のお茶が岡山県内で消費される文化」に、大手スーパーや病院などたくさんの方々に共感、応援をしていただき、少しずつではありますが目標に向かっています。これからも「岡山県産のお茶が岡山県内で消費される文化」を目指して頑張ります。
さて、次回は僕がヨーロッパにお茶を販売しに行った時のお話をさせていただきます。何故ヨーロッパなのか、ヨーロッパで飲まれている緑茶は? など、世界からみた日本茶の位置づけを、経験談からお伝えをさせていただきます。