and F 教室体験記

非認知能力の基本の「き」

  • 知る
  • 2023.10.02

and F 教室は、「ともに学び、ともに考える」をテーマに当財団が定期的に開催する「学びの場」です。(取材・文/黒部麻子)

今回のテーマは「非認知能力」です。この分野の第一人者である中山芳一先生をお招きし、じっくりお話を聞くことができました。

非認知能力とは、点数で評価できない力、「見えない学力」のことを言います。大きく3つに分類されます。

①がまん系の自分と向き合う力(自制心、忍耐力、レジリエンス=回復力)

②やる気系の自分を高める力(意欲、向上心、自信、自尊感情、楽観性)

③つながり系の他者とつながる力(コミュニケーション力、共感性、社交性、協調性)

非認知能力が育つと、認知能力(勉強やスポーツ)も伸びていきます。新学習指導要領でも、非認知能力を育むことが盛り込まれました。岡山県では、「夢育(ゆめいく)」と名付けてこれを推進しています。この日は非認知能力育成の実践事例として、2つの取り組みが紹介されました。

まずは、井原市の取り組みを、井原市教育委員会の藤井剛さんから紹介いただきました。中山先生曰く、「井原市は僕が知る限り、県内の市町村でもっとも非認知能力育成に取り組んでいる市」とのこと。井原市では、中山先生の協力のもと、独自に非認知能力を集約・整理し、「いばら愛、やり抜く力、まき込む力」の3つを「井原“志”民力」と名付けました。学校と地域が連携・協働し、学校では学習や生活における目標設定や振り返りを行うことで非認知能力を養い、その力を、世代を超えた地域での交流やイベントにも役立てています。

次に、A.M.I学童保育センターの取り組みについて、中野健汰センター長が説明。同センターでは、子どもたちが自ら一日の計画を立てて振り返りをすることが大事にされており、独自の「ぱるノート」が使われています。また、半期ごとに子どもたちの育ちを保護者の方々と共有するための「學びアセスメントシート」も導入。みんなでルールを決め、プランを立て、放課後の時間を思いっきり遊ぶ中で非認知能力が育まれています。

この2つの事例から、非認知能力を伸ばすためには、何か特別な教育プログラムがあるというより、日々の授業や生活の中で、具体的な行動指標を意識し、評価や振り返りの機会をこまめにつくることが大事なのだと感じました。

そのほか中山先生から、非認知能力をのばすために「やってはいけない」子育ての紹介や、学校での教育実践のステップについても紹介されました。大事なのは、上からの押しつけではなく、子どもが自ら気づくこと。そのためには、子どもの姿を肯定的に捉えるための心の「レンズ」を持ち、ほめたりいろんな経験をさせたりして意識づけをしていくことが重要です。

中山先生の話の後、気づきや、感想を共有する参加者