and F 教室体験記

対話型鑑賞を体感してみませんか

  • 知る
  • 2023.06.01

「対話型鑑賞を体感してみませんか」では、対話を通して気づきや思考を深めていく体験をしました。そのプロセスをレポートします。(取材・文/黒部麻子)

対話型鑑賞は、1980年代後半にMoMA(ニューヨーク近代美術館)で開発されたVisual Thinking Strategies/VTSを源流として、日本ではその呼称のもと、鑑賞教育プログラムとして実践されています。グループで互いの感想や意見を語り合いながらアート作品を鑑賞することで、観察力や批判的思考力、コミュニケーション力などが培われるといわれており、教育やビジネスの観点からも、今、注目が集まっています。

ベネッセ本社の敷地内に展示されているアート作品を題材に、この「対話型鑑賞」を実際にやってみようという本講座。講師は「ベネッセアートサイト直島」で教育プログラムや研修等のファシリテーションをされている間部俊一さんです。

「対話型鑑賞では、何を話しても構いません。焦らず、ゆっくりで大丈夫です。作品そのものについてだけでなく、周囲との関係から感じたことでもOK。途中で考えが変わったり、前に話したことと矛盾が生じたりしても構いません」と間部さん。 「小難しく考えなくて大丈夫そうだ」と、ほっとしました(笑)。

レクチャーの後、展示のある場所へ移動。数人ごとのグループに分かれ、作者もタイトルも何も知らないままに、作品を見ながら感じたことを話していきます。

「1枚の絵が分割されているようだ」「何か有名な絵を転写したものでは?」「なんでフィルムを継ぎはぎしてるんだろう? あえて継ぎ目を見せているのかな?」「天候や時間帯によって光の入り方が変わって見え方も変わる」

屋外にもたくさんの作品があり、その都度、近くの人どうしでグループになって対話しながら鑑賞していきました。

自分と同じところに着目している人もいれば、全く違う視点で見ている人もいて、それがまた刺激になって、新たな発見や疑問につながっていく。初対面でも気兼ねなく話せて、一緒に作品の見方を深めていくことができる、心地よい時間でした。何より「正解を言おうとしなくていい」ということが、アートをぐっと身近なものに感じさせてくれました。

自分の目に留まったことや感じたことをまずはそのまま言葉にすること、そして他の人の言葉を聞くこと、それを繰り返すことで、いつの間にか制作者の意図や時代背景に近づいていたという体験もしました。

ベネッセ本社にお邪魔するのは初めてでしたが、たくさんのアート作品があることも驚きでした。一回ではすべてを鑑賞できなかったので、ぜひまた開催してほしいです。