旭竜幼稚園の跡地活用を目指して
孤立しがちな未就園児の親子や待機児童、小学生が安心して遊べる居場所をつくりたいと「子育て広場まんなか」の活動を仲間たちと始めた岡田直子さん。現在は地元のコミュニティハウスを利用していますが、将来は昨年度末に閉園した幼稚園を活用し、世代間交流の拠点にもしたいと日々奮闘中です。(取材・文/和田広子)
「長女が授かるまでは、地域との繋がりは希薄でした」と照れくさそうな岡田さん。そんな岡田さんが地域で活動を始めようと思ったきっかけは、近くに親や親しい友人、顔見知りさえもいない状態での子育て、いわゆるアウェイ育児を経験したこと。また、西日本豪雨(2018年)で家の周りが浸水被害に遭い災害の恐怖を味わったことも大きなきっかけとなった。「子どもが病気になったときインターネットやSNSでたくさんの情報を得ることはできますが、信頼していいものか不安になります。でも、近所のママ友からのアドバイスは信頼できますよね。災害のときに、オムツを貸し借りができるのもママ友ですし、いざというときに頼れるのはご近所の方ですし」と話す。
地域の大切さを実感した岡田さんは、自分のように地域社会との接点がなかった若年層の意識を変え、自分が住んでいる地域に目を向けてもらいたいと思った。そのためには、まず子育て世代を対象に子どもたちが安全に遊べて、親は見守りながら情報交換ができる場「子育て広場まんなか」を地元のコミュニティハウスで始めた。定期的に開催しながら、地域の方も参加できるイベントも企画し、交流できるようにした。
最初は、「子育て広場まんなか」のことも岡田さん自身のことも「何?」「誰?」という感じだった。それから町内の掃除や集まりなどに積極的に参加して、自分の要望だけを伝えるのではなくて、町内の一員としてできることをやっていった。活動を続けていくうちに、だんだんと認識してくれるようになった。
活動が定着し、つながりが深まるなかで、世代間交流の拠点となる「場」が必要と感じていった岡田さんは、改めて閉園した幼稚園を使いたいことを町内の人たちに話していった。幼稚園は、岡田さんの家から見える場所にある。「閉園するまでは、15時〜16時半まで園庭で遊ぶことができたので、用事がない時は、暑くても寒くても、よく行っていました。ふたりの子どもが幼稚園の運動場で遊んでいると地元の小学生たちが一緒に遊んでくれて、スーパーとかで会うと声をかけてくれるんです。それがとてもありがたくて、嬉しかった。そういうのがなかったら、この活動は始まってなかったかも。」と振り返る。
岡山市内には天候に左右されず、室内で体を動かして遊べる場所が少なく困っているというママたちの声も後押しになり、来年度から「子育て広場まんなか」の活動を「岡山市子育て広場」の活動として閉園した幼稚園で開催したいと行政に提案している。まだ開催できるかどうかは未定だが、町内会の協力を得ながら幼稚園の跡地活用の第一歩を踏み出そうとしている。
出典:fueki74号(2021年1月25日)