and F 教室体験記

RESASの基本の「き」を学ぶ―ビッグデータを活用してみませんか?

  • 知る
  • 2022.04.01

「RESASの基本の『き』を学ぶ」では、ビッグデータを活用してみましょうと、オンラインで開催しました。その体験を黒部麻子さんにレポートしていただきました。(取材・文/黒部麻子

 みなさん、RESAS(リーサス)ってご存じですか?

 経済産業省と内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供している地域経済分析システムで、産業構造や人口動態、人の流れなどのビッグデータが集約されています。インターネットでRESASにアクセスすれば、誰でも無料でそれらのデータを見ることができます。

 今回の講師は、倉敷商業高校の川崎好美先生。統計データというと、何やら難しそうなイメージですが、高校の授業(総合的な探究の時間)でもこのRESASを使っていて、「地方創生政策アイデアコンテスト2019」で同校は地方創生担当大臣賞を受賞しています。小学生のお子さん息子さんも、夏休みの自由研究にRESASを役立てたそうです。

「RESASで見えてくるのは『鳥の目』のように、俯瞰的な視界です。『だいたいこんな感じ』というざっくりとした把握をするのに適しています。」そう川崎先生は語ります。

 その後は実際にRESASを見ながら、どんなデータから何が読み取れるのかを解説していただきました。たとえば、浅口市と高梁市の人口推移のグラフ(※左が浅口市、右が高梁市)。

浅口市と高梁市の人口推移のグラフ

一見、どちらも似ているように見えますが、生産年齢人口(緑)と老年人口(黄)の交点は、浅口市は2045年、高梁市は2035年。老年人口が年少人口(青)を上回るタイミングも、高梁市のほうが約10年早い。そう考えると一口に人口減少問題といっても、対策が求められるスピード感は自治体ごとに違ってくるはずです。

 また、岡山県内だけでなく、さまざまな自治体のデータが登場しました。「ビジネスでは自分の得意分野ばかり取り組めるわけではない。だから、あえて自分の良く知らない土地のデータ分析をすることが大事」と川崎先生。たとえば福岡県うきは市は、従来から観光PRをしてきましたが、RESASを使った分析により、福岡市から訪れる観光客が想定より少ないことが判明し、佐賀や大分といった近隣地域に向けたPRに注力するようになったそうです。データによって戦略を変えた実例です。

 「人口問題ひとつとっても、日本や先進国【日本をはじめとする先進国or先進国】では少子化ですが、世界的に見れば人口は増えていて、人口爆発が問題になっています。ですから、対話をするためには、前提をそろえることが大事です。そのためにデータを使い、エビデンスに基づいて考える。その力は、今後どんな分野でも役立つはずです。RESASは背景が黒くてとっつきにくいイメージがありますが、そうした思考を育むうえで、とても良い教材だと思います。」

 川崎先生の力強い言葉に深く頷きました。

(2022年1月25日 FUEKI No.77、開催日:2021年10月9日)